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声を出さずにニャーと鳴く #2 名前とは?呼び名とは?

2回目にしてなかなかショッキングなことだが、我が輩の名前、正確にはボンというらしい。漢字でも平仮名でもなく、カタカナでボン。動物病院の診察券にもそう書いてあるから間違い無いだろう。ではなぜ我が輩が我が輩の名前を梵太郎だと認識したのか。これには他ならぬ主のせいである。「梵太郎、お腹減ったかい?」とか「ねぇ、梵太郎。僕の話を聞いてくれるかい?」などど話しかけられれば、「あぁ、我が輩は梵太郎というんだ」と思うのが普通である。聞けばこの主、子供のころ一緒に暮らしていたハムスターに清十郎と名付けてセージと呼び、ペルと名付けた犬をペル公と呼び、先代の猫にはりんと名付けてりんころと呼んでいたらしい。人間の、いや、この主の考えることはよくわからない。今夜の愚痴?は、そんな名前にまつわるものだった。

「ねぇ、梵太郎。爪切男って知ってる?僕の好きな作家さんなんだけど、この前3ヶ月連続で書籍を発行してね、それぞれの初版についてる応募券を集めて送ると、爪さん直筆の感謝状と小冊子がもらえるんだって。」

『・・・にゃあ(会ったこともないのに親しげに爪さんなんて呼びやがって)』

「んでね、昨日応募券を郵便ハガキに貼って投函したんだけどさ、文字を書くのって久しぶりだったからなんだかおぼつかなくてね。”爪”の真ん中の線、ちょっぴりはねちゃった。」

『にゃ??』

「はねたから、”瓜切男”っぽくなっちゃった。でもそのまま投函しちゃった。あははは。」

主よ。ミスをカミングアウトした後も1時間にわたって「僕がどれだけ感謝状を楽しみにしているか」を語っていた主よ。もし我が輩が爪切男氏の立場だったならば、名前を間違えるような主に宛てる感謝状にこめる想いは、「印税あっざす」だぞ。

名前のことをあまり気に留めない主は、人間社会でうまくやっているのだろうか。まぁ、いい。辛いことがあったら、我が輩が愚痴を聞いてやろう。

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