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『Ritomoのブルース』

いわゆるトラディショナルな黒人ブルースとは異なるジャパニーズ・ブルースというジャンルの鬼っ子は確実に存在する。それはジャパニーズ・ソウルと置き換えてもよい。

昭和の男尊女卑から形成された女性像は男の我儘に耐え忍ぶ忍耐型であったが男女平等が叫ばれるようになった昨今は男への感情を剥き出しにする激情型へと移行した。例えば淡谷のり子から脈々と受け継がれるジャパニーズブルースの潮流が美空ひばり〜山崎ハコ〜中島みゆきなどを経て椎名林檎へと辿り着き更にカルバニズムという猟奇的なシチュエーションで歌われるあいみょんの「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」という強力な意志を持つラブソングを誕生させた。そんな流れを持つ日本歌謡の史実をブルースと言わずして何と言おう。

演劇を行う劇場空間を「小屋」と呼ぶが(今は封印している)旧RINCOLOの異称は“生聴音楽小屋”と呼ばれていた。かつて黒テントや天井桟敷といった劇団が薄暗く怪しげな小劇場から発していた前衛的な表現がやがて時代を呑み込んだようにRitomoの表現もまた得体の知れない異彩を放ち時代を呑み込もうとしている。アンダーグラウンド=ハイカルチャーだけが持つことを許される選ばれし者、或いはモノ…それがRitomoというシンガーソングライターでありRitomoが我々に提示する表現である。先の日本のブルースということでいえばアンダーグラウンドの女帝・浅川マキにも通ずる凄味を伴っていると昨夜のRitomoのライブで強烈に感じたのだ。

Ritomoの根幹にあるブルースを感じた夜


RitomoがRINCOLOで奏でた音楽は限りなくアンダーグラウンドでありながら相反するポピュラリティーを内包し、いわばそこには本人が無意識のうちに時代を超越する日本のブルースを歌うスタイルを継承している姿を垣間見た。音楽というイデオロギーが存在するのならRitomoの歌はブルース以外の何モノでもない。僕はRitomoのブルースを圧倒的に支持する。

ステージを降りるとアングラとは程遠く可愛らしい少女なのだ

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