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視察報告 東京都中央区 一般社団法人 日本母乳バンク 尼崎市議会議員 池田りな

こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。「一般社団法人 日本母乳バンク」の視察について書きます。

2017年5月、当協会は日本の新生児医療において「母乳」の活用を促進することを目的として設立されました。医療の発展により生まれたときの体重が1,000グラム未満の未熟児でも助かる時代になりました。

 様々な事情で母乳があげられない赤ちゃんには粉ミルクや点滴で栄養を与えます。早く生まれた赤ちゃんにも、できるだけ早くからおなかに栄養を与え、早期に体重が増加し点滴が早くやめられるなどの多くの利点があります。お母さんの母乳が出るまでの間を母乳バンクから提供する「ドナーミルク」でつなぐという考えが広がってきています。

 母乳バンクの役割は2つあります。1つ目は、ご自身のお子さんが必要とする以上に母乳が出るお母さんから寄付を受けた母乳を適切に低温殺菌処理・細菌検査を行い、冷凍保管した上で、NICU(新生児集中室)の要請に応じて、「ドナーミルク」として早産・極低出生体重(体重1500g未満)の赤ちゃんに提供する仕組みです。

 2つ目は、母乳育児の各種研究です。搾乳時のお母さんの状況や細菌検査結果などから、ドナーミルクとして利用できないと判断した母乳を用いて研究を行っています。災害時にも備えておける、母乳から作られた粉ミルクも見せていただきました。

 母乳の研究事例として、乳の分泌を誘発するホルモンを使ってトランスジェンダー女性が授乳できるようになった海外の症例の紹介もありました。

 母乳ドナーの必要性を2点挙げます。1点目は、母乳を必要としている赤ちゃんは年間約5,000人いるそうです。尼崎市は、極低出生体重児(1500g未満)の数は、令和3年26人(※)と報告されています。出生数は減っていますが極低出生体重で生まれる子が年々増えています。
(※)引用元:「保健行政の概要(尼崎市保健所)」P.142

 2点目は、母乳は赤ちゃんの⽣死にかかわるのが壊死性腸炎という腸の⼀部が壊死してしまう病気から命を救えることです。壊死性腸炎は、⺟乳で育てたときよりも粉ミルクで育てたときのほうが⾼確率で起こることがわかっています。

 同団体の常務理事の田中麻里さんは、運営上の課題は2点あるとおっしゃっていました。1点目は、新規ドナーの登録です。母乳ドナーのお母さんは自身の子どもの母乳育児中にドナーとなります。授乳は一時的なものになるので、常に新しいドナー登録が必要です。現在、母乳ドナー登録施設は9都道府県17施設しかありません。大阪府には1件もありませんが、兵庫県では唯一尼崎市の古賀小児科が登録施設になっています。

 そのため、母乳ドナーになりたくても登録にいけないお母さんが多いのが実状です。受入施設では、血液検査や搾乳方法の指導なども行い、手間もかかる上、費用補助も決して高くないため、登録施設になることが難しい点も要因ではあります。

 2点目は、母乳バンク使用の施設を拡大することです。初年度は、母乳バンクから無償でドナーミルクが提供されますが2年目以降は導入にはコストがかかるため、導入をためらう施設も多いとの事です。尼崎市では、県立尼崎病院が母乳バンク使用施設に登録されています。

 

尼崎市政に活かしたいこと
尼崎市は、他都市に先行して母乳バンク使用施設と母乳ドナー登録施設があります。私の周りにも、母乳が出すぎて乳腺炎などになるお母さんも多くいます。今後、尼崎市において母乳ドナーの啓発をしていきます。早速、私は保健所健康増進課に愛知県のように母子手帳を交付する際に、母乳バンクのチラシを同封していただくよう要望しました。これにより、市民の方々に母乳バンクに関する情報をより広く提供し、母乳ドナーへの関心を高めることが期待されます。

▶愛知県で母乳バンク普及啓発用フライヤーを配布

https://milkbank.or.jp/wp-content/uploads/2023/10/cca918a3d87a8d05761d4c7906a90e0a.pdf

 

▶資料提供:一般社団法人 日本母乳バンク


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