スペイン11楽園のタパス、太陽のお酒に見送られて
旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪
スペイン料理作りのアシスタント
世界的大スターメッシがついこの前まで活躍していたFCバルセロナの本拠地、カンプ・ノウスタジアム、モンジュイックの丘、カタルーニャ美術館など、その後もバルセロナの観光は見どころ満載だった。
観光を満喫して、スペインの兄・カルロの家に戻ったら、カルロの家族が何やらワクワクした表情でカルロに話しかけている。
「Rina!今夜はママとパパが、一緒にスペイン料理を作ろうって言ってるよ」
「楽しそう!でも私、アシスタント出来るかな?」
「大丈夫。ウィーンの寮で僕のアシスタントができていたから、上出来だよ!」
私がしたアシスタントとは、ただ具を混ぜたりお湯を入れるだけだっただが、そんなことでも認められると単純に、嬉しいものだ。
カルロのお母様だけでなく、お父様の手つきがとても良く、せっせと数種類のタパスが仕上げられて行く。
もちろん、ウィーン語学研修の寮で料理係もしていたカルロの手つきも、私からしたらプロ級だった。
楽園のタパス
私のリクエストに応え、たくさんのトマトとモッツァレラチーズも入れてくれて、完成したサラダが真ん中に並べられた。
その周りに生ハムを並べたハモン・セラーノ、小エビをニンニクとオリーブで煮た、日本でも大人気の「ガンバス・アル・アヒーリョ」、すっかり気に入ってしまった、スペイン風オムレツ「トルティージャ」、そしてスペインに欠かせない「パエリア」。
書いているだけでもお腹が空いてくる組み合わせだが、この楽園で実際に作って食べると、更に格別の美味しさだった。
再訪の約束
「こんなに美味しそうにタパスを食べてくれて、僕は嬉しいよ!」
私が次から次へとタパスを口に運ぶ姿は、カルロのお父様を喜ばせている様だった。
「カルロから、Rinaはいつでもスペイン人になれるほど、よく食べて、よく笑って、よく遊ぶって聞いてたけれど、それは本当だったわ!バルセロナも、とても楽しんでくれているよね」
「はい!カルロのおかげで憧れのガウディ建築も制覇できて、本当に幸せです」
「次は、ホセ・カレーラスのコンサートを聴きに、戻って来たらいいよ」
「それに、次はピアノがある場所も見つけておくから、ピアノも必ず聴かせてちょうだい」
「そうだ!君はピアニストなんだから、バルセロナでもコンサートをしないと!」
「いえ……ピアノはこれから、大学で勉強するんです……」
「いいんだ!僕達にとったら、君はすでに最高のピアニストだよ!またいつでも、遊びにおいで!」
どこまでも陽気で、ホスピタリティーあふれるスペインの兄・カルロとそのご家族。
マドリードに続いてバルセロナもかけがえのない場所になり、私はとことん恵まれている。
親友みゆとも、次は一緒に訪れられたら……と、一足早く日本へ戻らないといけなかった彼女のことも、想った。
赤ワインやサングリアも美味しく陽気に飲みかけていると、カルロが珍しく止める仕草をして来た。
学生でも門限なし
「昨日まではもっと!もっと!て飲ませたのに、今日はどうして?」
「だって僕ら、今からパーティーでテキーラを飲むんだよ!君にも、世界最高のテキーラを飲んで欲しいから、ここで酔ってる場合じゃないよ!」
やはりバルセロナでもマドリード同様、パーティーが欠かせないようだ。
こうなったら最後まで、スペインライフを楽しもうという気持ちが、私にもわいて来た。
「最高の時間を過ごしておいで!」
笑顔で夜遅くのパーティーへ送り出してくれる、カルロのご両親。
学生が、日が変わりそうな中パーティーに行くなんて、日本の実家では決して許されることではなかっただけに、国によっての門限や子供への信頼度の違いにも、とても驚かされた。
なんちゃって、ピアノスター
「バルセロナで、一番人気のバーなんだ!」
そういってカルロが笑顔で連れて行ってくれたバーは、確かに相当な賑わいと活気をみせていた。
「日本のお人形さん!今日も会えたね!」
オリンピック村のビーチで一緒にピザを食べた友人達、全く初めて出会う友人達も、カルロが話しているからか、日本人が珍しかったのか、あれよあれよとたくさん私の周りに集まって来た。
カルロは酔いからか、これまで以上に盛りに盛って、私を紹介してくれる。
「Rinaは、日本から来たピアノスターなんだ!今日サインをもらっておかないと、君達後悔するよ!」
「すごいじゃない、Rina!ここに私の名前を、日本語で書いてくれない?あなたのサインも、日本語で書いてちょうだい!」
「次は俺にもお願い!」
「じゃあ、次は私!」
私も酔いからかピアノスターの様な気分になり、上機嫌でサインとカタカナや漢字を、次々と話しかけてくれる彼らに書いて行った。
日本食のこと、アニメやゲームのこと、音楽のこと、話は尽きず、耳をつく大音量のビートに負けず、私達は大声で話していた。
すると、ショットグラスが頭上を通り抜けて行く。
太陽のお酒の登場
「あれって、もしや……?」
「そう!僕がディナーで言ってた、テキーラだよ!」
「私、マドリードでもテキーラは一発で酔っ払っちゃったから、なめる程度で……」
「ダメダメ!バルセロナのテキーラが、太陽の恵みを受けて一番美味しいんだから、飲み切るよ!」
ショットはあっという間に、私の手にも渡って来た。
「日本語で乾杯は、カンパイだったよね?ピアノスター・Rinaにカンパイ!」
カルロの掛け声に合わせ、そこにいた仲間達が大声で、発音が面白い日本語で、
「カンパイ!」
と叫んでくれた。
これは、なんちゃって・ピアノスターとして、もう飲み切るしかない。
太陽のお酒を飲むと……
思い切って飲んだテキーラは、勝利の杯とでも言ったらいいだろうか。
テキーラが、太陽のごとく熱く喉に突き刺さると、スター気分はもはや止まる気配がなくなって来た。
とんでもなく陽気なショットは、私達全員をスターの様な気分にさせ、私達は旬のポップスに合わせ、どこまで爽快に踊り明かした。
クラシックピアノのスター候補だったはずが、アップテンポの曲でスペイン人達と踊り明かしていると、自身がロックスターの様な気までしてくる。
曲のフレーズが変わるごとに踊る友人が変わっていたが、どの友人も、根っからの明るい笑顔が光り輝いている。
彼らの太陽のような笑顔で、改めて気づく。
ここはスペインなんだ。
踊っているのは、スペイン人やスペインに住んでる住民なんだ。
スペイン最後の夜、私もまた、彼らの太陽に当てられ輝きを増した様に思った。
「♪♪……あれ?What……?」
カルロの雄叫びの様なスペイン語に合わせ、何やら友人達が私の周りを取り囲み、いつの間にか私は彼らから持ち上げられ、宙に浮いていた。
「ピアノスター!」
「リナ・コラーダ!」
私の名前が色々なニックネームで呼ばれ、私は優勝したサッカー選手の様に宙を舞うことになった。
「まだ全然、スターじゃないんだけど!まあ、いっか……!」
何かを考えている余裕もないほど、私の脳はテキーラですっかり、ピアノスター、いや、ロックスターになり切っていたようだった。
太陽のお酒が、私に与えたもの
バルセロナでの、ピアノスター体験。
それはあの素晴らしい仲間と太陽のテキーラがあったから、できたことだと思う。
テキーラは正しく飲めば、その太陽のようなパワーで私達を、どこまでも陽気で幸せなスター気分にしてくれる。
「お酒が弱いから、テキーラなんて……」
そんな方こそ、早い内に一度は、テキーラは経験して頂きたい。
バーの友人達、カルロのご両親やカルロが思い描いたような、ランランの様な世界的ピアノスターには、実際はならなかった。
でも、この時宙を舞うほど熱狂されたからか、私はこの後のウィーンでの演奏の度に、国際的な観客の方々から、たくさんの歓声を頂いた。
この時彼らが大歓声で私を称えて送り出してくれたことが、その後に繋がったのかもしれない。
コロナが終息したら、再び訪れたい国
一緒にスターになり切った彼らと私は、今でもSNSで繋がっている。
アハメドの母国、レバノンへの旅もまだ諦めておらず、アハメドは今も、訪問を待ってくれている。嬉しいことだ。
スペインの兄・カルロは、私が日本に帰国して社会人になって2年目の頃を皮切りに数回日本を訪れ、日本と日本食を大いに気に入ってくれた。
相変わらずカルロはよく食べたし、1日何食も食べる生活が続いているそうだが、トライアスロンも始めたからか、長身でスリムなスタイルは変わっておらず、羨ましい限りだった。
お好み焼きと日本酒を飲みながら、バルセロナ滞在の思い出も懐かしく振り返る。
「君はいつ、約束してたコンサートをバルセロナで開いてくれるの?みんな、待ってるよ。太陽のテキーラと一緒にね!」
今もたくさんの家族がいる、スペイン。
コロナが終息したら間違いなく、再び訪れたい国の1つになって来るだろう。
最高のスペイン旅行を終え、いよいよ私のウィーンでの大学生活が、幕を開けることになった。
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