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フランス3 ラヴェルから、天国への誘い(コンチキツアー1-21)

ずっと参加したかった、英語を使った国際ツアー「コンチキツアー」での思い出です。
旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪

https://youtu.be/WDgVVtVPxiM

天国に近い曲

クラシック音楽を音楽高校で15歳から学び始めてからというもの、なぜか、作曲家の晩年の曲に強く惹かれることがあった。
それは、そこに天国に近い雰囲気があったかもしれない。
天国ーエデンーそれは、誰にとっても憧れの世界だろう。
どの作曲家の曲を聴いていても、晩年の作品はどことなく、天国へ誘いこまれる気分になる曲が多い。
フランスの作曲家ラヴェルが、亡くなる6年前に仕上げた、『ピアノ協奏曲ト長調第2楽章・アダージョ』も私にとってそういう曲で、初めて聴いたその時に一聴き惚れした。

研ぎ澄まされたピアノのメロディーと、「管弦楽の魔術師」と言われる豊かな音色とハーモニーを持つオーケストレーションは、まるで魔法のように私達を天国へと運んでくれるかのようだった。

南フランスからフランス中心部へ
コンチキツアーの旅行に、話を戻そう。
イギリスで幕を開けた数週間のコンチキツアーも、あっという間に終盤を迎えていた。
ツアーメイト達と過ごせるのも後3日となり、私達は体調不良になっても、毎日を楽しみ尽くした。

私も声枯れがますますひどくなり、バスではルームメイトのジュリーに笑われてしまった。
「Rinaの声、どんどんハスキーになるね!」
「助けて……全然治らない!ジュリーだって、いつもよりだいぶ声が低くなって、エディット・ピアフに近づいて来たかもよ?」
この夜からのパリ入りにウキウキし、話が絶えない私達だったが、あまりの睡眠不足でまぶたが徐々に重くなって来た。
いつの間にか熟睡していた内に、バスはずいぶんと北上したようだった。

乾いた大地や陽気な雰囲気が、気品の中にも存在していた南フランスとは、空気も景色も違い、そこからはより清らかな空気を感じた。
車窓から見える木々や家々の色合いも、だいぶ変わっていた。

「平和」
「牧歌的」
そんな言葉がよく似合う風景が、バスの外には広がっていた。

時が止まったかのような宮殿

「みんな、起きて!フォンテーヌブローに着いたよ」
ツアーガイド、ルーカスのかけ声で、まだウトウトしながらバスから降りると、向こうには豪華な宮殿が広がっていた。

これまで脳裏で流れていなかった、『ラヴェルピアノ協奏曲2楽章・アダージョ』の冒頭のピアノソロが、ここに来てゆったりと流れ出した。
「まだ夢を見てるんじゃ……?!」
そう思ってしまうほど、その宮殿や庭園は現実離れしていた。
活き活きと時が流れていたニースやアヴィニオンとも、香や食で私達を楽しませてくれたグラースやリヨンとも違う。

このフォンテーヌブローには、動きがない。
テンポが全く変わらない、ラヴェルの「アダージョ」と同じように。

「このルネッサン様式の宮殿は、ナポレオンのお気に入りだったんだって。エルバ島に流される前にも利用ほどだったみたいだよ」
常に躍動していたナポレオンにとっても、時が止まったかのようなこの宮殿は、唯一の癒しの場所だったのかもしれない。

一休憩にぴったりの場所

宮殿だけでなく、宮殿を見守るように造られている庭園も、貴族の庭園に多い「仕掛け」のようなものは特になく、ただただ優しげでゆったりとしている。
噴水や花壇はますます気持ちを癒してくれ、私達はほんの数時間、このフォンテーヌブロー宮殿の住民になった気分で散歩をした。

光が温かくさし、慈愛に満ちた宮殿庭園の散策は、これまで刺激の連続を経て、ツアーのクライマックスの地、パリに行く前に一呼吸するのに完璧な場所だった。
ツアーメイト達と船にも乗って、貴族気分を味わった。
そして寝転がって、ツアー後のそれぞれのことを語り合っている内に、うたた寝していた。
幸福の休息の間中、ラヴェルの「アダージョ」は脳裏でずっと流れ続けた。

天国への旅を始める時に流したい曲、場所

「死ぬ時は、こんな場所で逝きたいな」
「Rina、まだ学生なのにすごいこと考えるね」
「だって、天上の場所で最高の音楽を鳴らして、大切な人に見守られて死ねたら、それこそ最高の死に方じゃない?」
「確かに。気持ち分かるよ。君が死ぬ時は、たくさんの人が群がりそうだな」
「だと嬉しいけど。来てくれる?」

どこまでジョークでどこまで本気か分からない会話も、うたた寝ならでは。
でも天に召される時、ラヴェルの『アダージョ』を聴き逝きたいというのは、本当だ。
その場合、ここフォンテーヌブローも訪れ、天国への旅を始められたら幸せだろう。

大好きな音楽に合う場所を探そう

天国へ誘いこんでくれるような場所、そして音楽。
それらが見事にリンクした時、なぜか信じられないような安らぎを感じた。
天国はまだ身近に感じられない方も、「大好きな音楽」とその音楽にピッタリの「場所」。
これはぜひ、探し求めて頂きたい。

#フランス #コンチキツアー #古城 #ラヴェル #天国


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