あの日見たタンバリン男の名前を私達はまだ知らない。
この話は私が合コンで知り合った『タンバリン男』との出会いから別れまで、わずか4時間の出来事を記録したものである
私がまだホステスをやっていた頃の話
たまたま参加したある合コンで出会った1人の男性との出会いが
私の人生観を大きく変えることになった
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始まり
当時、ホステス仲間に誘われて合コンに行くことが多々あった
その日のお相手は某有名IT企業の社員
予約してくれてる店もさすがは大企業って感じの綺麗目なお店
みんなのメイクの気合で本気度が伝わってくる
「「「「今日は戦争だなぁ」」」」
女側スタメン紹介
A子
今回の女側幹事。保育士とホステスという2足のわらじを持つ。倉科カナ似の巨乳。
基本的にイケメンが好き。
B子
25歳の最年長枠。女の前では性格が悪い。男の前では性格が良い。
基本的にイケメンが好き。
C子
彼氏3人持ち。年中乗り換え先を探している。この中で1番美人。プレゼントのブランド品は全部メルカリへ。
基本的にイケメンが好き。
私
基本的に周りを盛り上げる。男性側が引くような下ネタコールでも容赦無く言えてしまう。顔より性格の良い人を探している。
基本的にイケメンが好き。
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PM19:00
男性側が先にお店に入ってるみたいなので、遅れて入店
黒いソファ席に3人組のスーツ姿が見えた
「「「「イケメンやん」」」」
合コンには相手が微妙な『外れ合コン』と相手が良い『当たり合コン』、相手が最高な『公式戦合コン』がある
今回は完全に公式戦
絶対に周りの女から遅れをとってはいけない
男性側スタメン紹介
健(たける)今回の男性側の幹事。雰囲気イケメン。佐藤健の従兄弟くらいのルックス。愛車はBMWらしい。
五郎(ごろう)
見た目が完全に『ラグビーの五郎丸』。短髪黒髪イケメン。好き。趣味はサーフィンとBBQらしい。好き。
祐樹(ゆうき)
某ハンカチ王子っぽいイケメン。実家が地元の地主らしく、ブランド物しか身につけていなかった。大学ではサッカーをしていたらしい。
気が付いた人もいるかもしれないが男性側が1人少ない
どうやら残業で一人遅れてくるようなので、先に乾杯しようということに
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戦い
A子は健と、B子とC子は祐樹の方に行ってくれたおかげで、私は五郎の横をがっちりホールド
とにかく五郎の筋肉を褒めまくった
ボディタッチも多めにした
今日の合コンでの勝利に向けた布石を少しづつ打っていく
合コンは詰将棋と同じで確実な答えにたどり着くために最適解をひたすら選び続ける
五郎の王将は私が絶対に奪い取る
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PM20:30
1次会はいつもの合コンのように盛り上がり2次会の話へ
健「2次会カラオケ予約してるから移動しよ!もう一人もそこで合流できるって!」
もう全員残りの一人の事などどうでもよかったが2次会に行く事へ
健「支払いは済ませといたからタクシーで行こ!店の前に呼んでるから!
((((素敵やん))))
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PM21:00
タクシーでカラオケに向かってる途中に五郎から手を握られた私は勝ちを確信。
ラインで他の3人に釘を刺しておく。
合コンってサバンナより弱肉強食なのよ
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出会い
カラオケに到着した我々御一行は謎に包まれていた最後の1人と出会った
??「こんばんは...」
は???
そこに立っていたのは明らかに大企業の社員ではない見た目の男
仕事終わりなのに私服
謎のダサいチェック柄のシャツ
めっちゃ汚れたコンバースのスニーカー
参考画像
「「「「やばいの来た!!!」」」
遅れてきた男紹介
名前:不明
名乗らないため名前は不明。健の大学時代の後輩。他の3人と同じ職場ではない。フリーターをしてるらしい。
やっぱり違う会社やないかい!
なぜ今回の合コンに呼ばれたのか意味がわからない
ポケモンでゴーストタイプがゴーストタイプに効果抜群なのと同じくらい意味不明
けどもう女側はターゲットを決めてるから今更雑魚キャラが一人増えても関係ない
もう一人の男を全く気にしないまま私たちはカラオケに入った
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衝撃
定番の盛り上がる曲を何曲かみんなで歌うお約束の流れ
五郎がいきなりボカロを歌い出して周りの空気が冷えたが、カラオケでも私たちは盛り上がった
しかし遅れてきた男は全く混ざろうとしない
これじゃ数合わせにもなってないぞ!と思っていると
ニヤニヤしながら健が叫んだ
健「次、残酷な天使のテーゼ歌います!!!!」
すると私の向かいに座っていた遅れてきた男が話しかけてきた
「タンバリン貸してください」
急に声をかけられたのでびっくりしたが、私が持っていたタンバリンを渡すことに
次の瞬間カラオケルーム内に衝撃が走った
(ここからは文字で表すと難しいので動画貼っておきます。あとでわかったのは、タンバリン男はこの動画を完コピしてました)
『『『『!!!!!!』』』』
真顔でリズムに合わせてタンバリンを叩きまくる姿に爆笑する私たち
決して笑顔を見せずにタンバリンを叩き続けるタンバリン男
かつてここまで真剣にタンバリンを叩く男がいただろうか?
それは今までの私が知っているタンバリンじゃなかった
幼稚園のお遊戯会で姪っ子が叩いたタンバリン
結婚式の余興で謎の曲と一緒に叩かれたタンバリン
ホストクラブで売れないホストが酒を吐きながら叩いていたタンバリン
それらとは比べることすら申し訳なくなるクオリティ
だんだん額に汗をかいているのがわかった
最初は爆笑していた私たちも徐々に真剣な眼差しになっていた
合コンの余興とか一発芸とか、そーいうレベルじゃない
『『『『これは演奏なんだ』』』』
健が残酷な天使のテーゼを歌い終わった時
合コンの主役は健でも五郎でも祐樹でも無くタンバリン男だった
そこから退室時間までタンバリン男の『演奏』は続いた
『タンバリン男がきた理由』
健がウケを狙って2次会のカラオケ用の秘密兵器として連れてきたらしい。
タンバリン男は普段忙しくて全然遊ばないみたいだが、C子の写真を見て参加を決意したらしい。
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別れ
PM23:00
退室の時間になり私たち4人はまっすぐ帰宅することに
誰もお持ち帰りされない
いや、されたくない
頭の中がタンバリン男でいっぱいだから
気づけば全員タンバリン男に脳内をヤられていた
最後にタンバリン男がその日一番大きな声でこう言った
「楽しかったです」
ちょっと泣きそうになった
明らかにコミュ障なタンバリン男がホステスと大企業のエリートサラリーマンしかいない合コンにくるのはめちゃくちゃ勇気のいる行動だったと思う
しかもその中でタンバリンを叩き続ける
自分がタンバリン男の立場なら絶対に無理だ
帰宅後、今日の合コンメンバーのライングループをみると、知らない名前が1つだけ
健、五郎、祐樹、(`・ω・´)
「ラインの名前が顔文字の初めて見たわ!」
一人でツッコミを入れた
結局名前わからんままやったな〜
シャワーを浴びたあと、無意識にパソコンで
"タンバリン Youtube"
と検索している私がいた
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学び
それまでの私って
夜職をしていること、学歴がないこと、見た目に自信がないこと
いろんなことに自信がなかったり後ろめたさを感じていた
けどタンバリン男を見て分かったことがある
他人からどう思われても
他人からどう見られても
自分で自信を持てる武器が1つでもあれば十分
着飾ったり、自分の肩書きで偉そうにしたり、
そういうことをしなくても『自分に自信がある状態が最強』ってことに気づくことができた
周りを気にして生きるのってすごい息苦しいし、比べれば比べるだけ上がいて嫌になることが多かった
もっと可愛い人
もっとお金持ちな人
もっと頭がいい人は
世の中に数えきれないほどいる
けどもし自分がタンバリン男なら絶対にそんなこと気にしない
どんな場所でも、どんな相手に対してもタンバリン一つで勝負できる、魅了できる、圧倒できる
あの夜、カラオケボックスでタンバリン男の姿から
1つの武器を磨き込むことが自信につながる
そんなことを教えられた気がした
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後日談
ここからは冗談みたいな本当の話
実は私はその後もタンバリン男と何回か会っていた
というのもタンバリン男が
「好きな人ができた」と相談してきたので
「じゃあ見た目から改善した方がいいよ」とアドバイスしたため、一緒に服を買いに行ったり美容室を教えてあげたりしていた
服装と髪型を変えるだけでこんなに雰囲気が変わるのかと少し驚いた
そこから数ヶ月後、ホステスを辞めたC子から久しぶりに連絡がきた
「実はタンバリン男と付き合った」
2度目の衝撃
なんとタンバリン男は見た目を変えたあと必死に就活した結果、IT系の大企業に就職を決めていた(一応健と同じ有名大学卒業)
そしてそのままC子に告白!
撃沈するも、諦めずに計13回にもわたる猛アタックの末、私のいた店でもトップレベルの美女であるC子と交際することができたみたい
もはやポジティブとかそういう次元を超えたタンバリン男の生き様がかっこよすぎる件について
現在も交際は順調に続いてるみたいで、タンバリン男は今度起業しようとしてるみたい
近いうちに有名人になるんだろうなぁ
今度サインもらっておこう
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私にとってのタンバリン
私にはタンバリン男にとってのタンバリンみたいな誰にも負けない1つだけの武器はまだ持っていない
けどタンバリン男を見て学んだ
常に自信を持つ
自分の不幸を周りと比べない
周りと自分を比べて悲観しない
これを意識するだけで人生が何百倍も生きやすくなった
これからも自分のペースで生きていけば
私にとってのタンバリンが見つかるはず
皆さんにとってのタンバリンは何ですか??
貴重なお時間を割いて読んでくださりありがとうございました!
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