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夜の男

30代。男。
マッチングアプリで繋がった。

実はその日、ダブルヘッダーだった。
昼過ぎから別の人と会い、夜にこの男と会った。
仕事終わりの彼は、スーツに身を包み、
面接官のように私と向かい合っていた。
実際に紹介業の仕事の彼は、
私とも面接しているようだった。
仕事の話し、後輩の話し、家族の話し、趣味の話し。
短時間ではあるが、プレゼン力のある人で
とても引き込まれたし、妙に納得した感があった。

プレゼンが終了した時点で時間は21時を回っていた。
決定的な何かがあったかは忘れてしまったが、
好感も持てたし、正直、昼間の男と
比べてみたかったのもありそのままホテルへ。
(比べてみたいとか最低だな…)

たぶん彼にとって、これはすごく
予想外なことだったんだと思う。
ウブな学生ですか?ってくらいに
ホテルに入るまでぎこちなくて
こっちもドキドキした。

人の目がなくなれば欲望は丸出しになる。
スーツを脱いでシャワーを浴び、
お互いに準備ができたらスタート。

愛のない行為は自分を冷静にさせる。
あ…こんな風にするんだ。
こういうの好きなのね。
そういうこともするの?
じゃぁ、こういうの好き?
ふぅん…ここ気持ちいいんだ。

冷静に、でもじっくりと、
感じて、味わう。
溺れることはない。
そう、溺れることはないのだ。

早いけど、何度もできると言うので
少し期待していたが、実際は2回しかできなかった。
お仕事帰りだし、疲れているからそんなものよね。

愛のない行為は、終わると早い。
時間が迫っていたものあるが、
白けるほどに余韻もなく帰る準備となる。
その姿を見るたびに、
あぁ、男って…。と幻滅する。

そういうものだと割り切ってはいるが…。

過去に1人だけいい男がいた。
慣れているといえばそれまでだけど
こちらを気持ちよくさせる術を知っている男。
身体だけでなく心も気持ちよくさせる男。
彼以上の男には、今まで会えていない。

ダブルヘッダーした男は、終電を気にして
足早に駅に向かって帰って行った。

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