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視聴者の薄情さを描いた名作『トゥルーマン・ショー』

トゥルーマン・ショー』という映画をご存じですか?

ジム・キャリー主演の言わずと知れた名作映画です。


なんと22年前の昨日(執筆時:6月6日午前1時40分)に本作が公開されたようですね!


私はこの記事を4日前くらいからこつこつ執筆していて、先ほど偶然このツイートを見かけて「お!ベストタイミング!奇跡!」と思ったのに、一時間ほど前に日付が変わっていました…惜しい(´・ω・`)

何はともあれ、これだけ長い間愛されている作品に出会えたことに感謝です。



さて話を戻しますが、実は私、この映画を見てからというもの、バラエティ番組で大笑いしたあとに必ず本作を思い出し、罪悪感を抱くようになりました。

まずは簡単にあらすじを紹介します。



あらすじ

離島・シーヘブンで、保険会社に勤めるトゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー)は、「おはよう! そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!おやすみ!」が口癖の明るい青年である。彼は生まれてから1度も島から出たことがなかった。それは、父と一緒に海でボートを漕いでいたときに「嵐が来るぞ」という父の警告を無視して船を進め、嵐を回避できず海に投げ出された父親を亡くしたことで、水恐怖症を患ってしまったためであった。
ある日、彼がいつものように新聞を買ったあと、雑踏の中ひとりのホームレスの老人とすれ違う。それは幼い頃、海に沈み亡くなったはずの父親だった。しかしその直後、老人は瞬く間に何者かに連れ去られてしまう。彼はこの出来事をきっかけに、自分の周囲を不審に感じ始める。(Wikipedia)



ここからネタバレがあります

また、この記事の後半で、私はあるバラエティ番組を視聴後の思考?感想?について記述しています(批判はしていませんが、ポジティブな内容とは言えないかもしれません…)

私に影響力があるとは微塵も思っていませんが、もしそういったものに不快感など抱かれる方はご注意ください。

また、この記事で書いている内容はあくまで私個人の感想です。誹謗中傷などはおやめください。




それでは映画の感想に入ります。


前知識もなし、あらすじも知らずに再生したので、私はすぐ違和感を覚えました。なんだこのカメラを通しているかのような変なフレーム…おかしなアングル…


え、どういうこと???


と疑問符を浮かべる私をよそに物語は進んでいきます。死んだはずの父に再会したトゥルーマンは、なんやかんやあって自室で自分の学生時代を回顧します。

それはかつて互いに恋に落ちたローレン(ナターシャ・マケルホーン)という女性のこと。

その女性と夜の海で過ごし、甘い雰囲気がふたりを包んだのもつかの間、ローレンが「奴ら」と呼ぶ何者かがヘッドライトを光らせてこちらへやってきます。

そして焦った彼女の放った言葉に私は合点がいきました。


「みんながあなたを見てて、あなたの前で芝居してるの」

「ローレンは偽名よ。わたしはシルヴィア」


はーーーーんそういうことか!

面白くなってきたじゃん!


とそのときはそう思い、私はスクリーンに向かって身を乗り出しました(今思えばこの時点で私も彼らと同じでした)


車から降りてきた男はローレンの父親だと言いますが、彼女は知らない男だと言います。さらに「信じちゃダメ!」とも。


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(出典:ピーター・ウィアー『トゥルーマン・ショー』)


「空も海も何もかも作り物の舞台装置。番組の一部なのよ」


これを最後にトゥルーマンはローレンと会うことはありませんでした。しかしこの出来事を思い出したこともあり、彼はさらに周囲への不信感を募らせていくのです。




率直な感想

私の自己紹介の記事をご覧くださった方はご存じかもしれませんが、私は後味悪くて胸糞悪い映画が大好きです)^o^(

そして本作は見事に私の心をぐっさりと刺していかれました。あっぱれ。

つまり、私にとってはとても胸糞悪く悲しい映画だったのです。


某映画評価アプリのレビューを読んでみると、「素晴らしい映画だった!」とか「すっきりした!」という声もちらほらありましたが、やはり7割くらいの方が「怖い」、「自分だったらと思うと恐ろしい」、「胸糞悪い」と書かれていました。


私に映画の魅力を教えてくれた元カレは(本作も彼に勧められて視聴しました)、私が「胸糞悪かったわー」というと「え、いい終わり方やったくない?」と言っていました。

こうやって、時に個人の感性で真逆の評価がなされるのが芸術品のすばらしさだなと思います。



胸糞悪いと思ったポイント① トゥルーマンが扉の向こうに消えたときの視聴者の歓声


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(出典:ピーター・ウィアー『トゥルーマン・ショー』)


この気持ち悪いほど喜びに沸く視聴者に疑問がぬぐえませんでした。


あんたたちは何に対して喜んでるの?

今まで娯楽としてきたトゥルーマンがいなくなっちゃうのにうれしいの?

あんたたちはトゥルーマンが作り物の世界で人生を送っているのをこの先も見ていたかったんじゃないの?


こういった疑問が次々と浮かびました。

この問いだけ見たらまるで私がトゥルーマンが脱出したのを快く思っていないかのように思えるかもしれませんが、そうではありません。


トゥルーマンの最後のセリフ、

「念のため、❝こんにちは❞ と ❝こんばんは❞ を」

そしてあの満面の笑み。


あれはトゥルーマンの、視聴者への最後のサービスだったと私は解釈しています。

自分の生まれ育った土地も、愛する人も偽りだったと知って彼は落胆したはずです。テレビに映ってるんだから何か話せと言われたって、それどころではなかったはずです。

それでも彼は最後の最後に、視聴者を楽しませようと、楽しい気分で終われるようにと、エンターテイナーとしてあのセリフと笑顔を絞り出したのだと思うのです。


そんな彼の苦しみを知らないで能天気に喜びに沸く視聴者にむかむかしたんです。もちろん視聴者がそんな彼の内情を知る由もないのですが。



胸糞悪いと思ったポイント② ラストで描かれる、視聴者の切り替えの早さ


そして私に一種のトラウマを植え付けたシーン。エンドロールに入る直前も直前、ふたりの仕事着姿のおじさんの会話です。


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(出典:ピーター・ウィアー『トゥルーマン・ショー』)


「番組表はどこだ?」


これです!!さっきまでトゥルーマンに感激してさんざん「Fooo!」と沸いていたくせにこの切り替えの早さ。きっとこのおじさんたちだけじゃなく、テレビを食い入るように見つめていた視聴者の大半が同じ行動をしたことでしょう。

もし私がこの視聴者のひとりだったらどうだろう。私はめちゃくちゃ余韻に浸るマンなので、SNSを更新したり彼のことをググったりするのかもしれません。何十年も彼の成長を見届けてきたならなおさら。



脱線しましたが、要はこのラストシーンが私の心に太く、鋭い杭を打ち付けたのです。

鑑賞後すぐは「うわーなんだこれ、こわ」と腑に落ちない感情を持て余しつつ、他の人のレビューを見てなるほどこんな伏線あったのかと新たな発見をして。

そのときは「すごい映画を見た」くらいにしか思っていませんでした。



日常生活での異変…

しかしその数日後くらいでしょうか。

私はある大物芸人が司会の、水曜夜10時から放送されている番組が大好きで、毎週録画しながらリアルタイムで見ているんですが、この番組ではドッキリのような企画がちょいちょい(むしろ毎回?)放送されています。

そして番組の視聴者からもスタッフからも出演者からも面白がられていじられている芸人も多数登場します。

それまでは私も面白おかしく視聴していたんです。



『トゥルーマン・ショー』を鑑賞後の、直近のそのバラエティ番組の日。このときも私は愉快に笑って視聴したのですが、番組が終わってテレビのリモコンをつかんだとき、『トゥルーマン・ショー』のラストシーンが脳をよぎりました。

そして言いようのない罪悪感……


そのとき、私も同じだったんだなと悟りました。

私は、あのときトゥルーマンの脱出を見届けて歓喜し、それも束の間で切り替えた視聴者たちにたしかに不快感を覚えたのに、私もまた同じ道をたどっていたんですね。

そう理解してからはその日はなんだか笑える気分にならなくて、少し気分が落ち込みました_(:3」∠)_



映画ごときで大げさな、と思われる方もいらっしゃると思います。

でも私にとってはそれくらい、この『トゥルーマン・ショー』の影響は大きかったということなんです。

一種のトラウマですね。


でも私はアホなので毎回その罪悪感を忘れてバラエティ番組を視聴し、その後に思い出してはまた居たたまれない気分に陥るんです。アホです。


決してそういった類の番組を否定しているわけではありません。現についつい見てしまう私がいますしね。

ただ、この映画は私に新たな視点・考え方を与えてくれたという点では、非常に影響力のある大切な作品だと思っています。



さいごに

さて、ここまで『トゥルーマン・ショー』の感想を綴ってきましたが、拙い文章でわかりづらい点も多々あったかと思われます。考察とか論理的な説明とか苦手なので感情論で突き進みました、ごめんなさい。

(今後もきっとこんな感じです)


私の本作に対する率直な感想は、視聴者側の行動に注目したから「胸糞悪くて悲しい映画」となりましたが、視点をトゥルーマンの勇敢さに移せば「何事も諦めなければ道は開けるよ」ということを示唆している映画でもあると思います。


本作に限らず、やっぱり様々な解釈があるからこそ映画は素晴らしい!と声を大にして言いたいです。

本作はこれからの私の人生に欠かせない映画になりました。皆さんもそんな映画に出会えますように。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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