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新商品

 「こんな新商品いかがでしょう?」
 見るからに怪しいセールスマンに渡されたのは何の変哲もないくつしただった。
 「くつしたくらいならコンビニで買えますけど…」
 「このくつしたは『考える』くつしたなんです」
 「『考える』?」
 妙なことだ。くつしたは足に履くもの、それが考えるだなどと高度な事ができるのだろうか。
 「この製品は我が社が独自開発をしたナノコンピュータが搭載されており、履くだけで貴方の体調や考えがこのくつしたに伝わって、体に良い影響をもたらすんです」
 言っていることが近未来過ぎて、ついていけてはないがとりあえず聞いておく。
 「例えば?」
 「例えば、そうですね。今日は頭が痛いと思ったとき、このくつしたが痛みを和らげる足のツボを押したり足首部分を調整して血流改善していきます」
 「それ以外はできないのか」
 「例えば、こんな事もできます。例えば、何か食べたいと思ったときに空腹を促進させるツボを押したり…」
 「これ、自分で調整できないのか?」
 さっきからツボだの健康面の話しかしない。生憎健康だけが取り柄なので、それ以外の話も聞きたい。
 「別途費用はかかりますが、チューニングすることができるアプリもございます」
 「なるほど。どんなことができるんだ?」
 「例えば、万歩計ですとかサーモグラフィ機能などが」
 「ふーん」
 「お客様、もしかして学生さんでしたか」
 「そうですけど」
 「で、あれば…」
 俺はセールスマンに耳打ちをされた。その瞬間、俺はあることを考えた。これなら誰にもバレずにテストのカンニングができると。

 

 翌日。
 「こんにちは」
 「すみません、キャッチセールスのたぐいはお断りしています」
 「●●大学の教授ですよね」
 「なぜ、知っているんです!?」
 ほっほっほっ、とセールスマンは不気味に笑う。
 「最近、何か変なことがありませんでしたか?」
 「そういえば、テストの回答が全く同じやつが30人くらいいたな…。記述式の問題で一言一句全く同じのだ」
 「もしかしたら、狙われてますよ」
 「何にだ?」
 「最近の学生はとても頭が良い。だから、ナノコンピュータ入りのくつしたを使ってカンニングすることが流行ってるんですよ」
 「そんなのが流行ってるのか!? 何か対策がしたい。そういったことを防ぐものはないのか?」
 「であれば、弊社の…」


No.83考える
No.42くつした
No.2138学生

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