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社内情報はググれない (データサイエンティストが学ぶビジネス その2)

こんにちは。普段IT系の会社でデータ分析やシステムの開発・運用などをしているrilmayerです。

データ解析職として新卒で会社に入社してから3年目に突入したので、会社での学びを自分なりにまとめて共有していこうと思います。
ここでは、自分が新卒の時に知っておきたかったことや、振り返ると重要だったなぁと思うことをテーマとしていくつかピックアップして掘り下げていこうと思います。
今回のテーマは「社内情報はググれない」です。

社内情報に目を向けよう

会社に入ると情報収集の仕方が学生のそれとは全く異なってきます。
基本的にはググれないですし、図書館に行って本を開いても答えがないことが多くあります。

しかし、社内の情報をどれだけ集められるか、そして収集した情報をどれだけ活用できるかによって出せる成果が全く変わってきます。
この記事では「社内情報」というものがどんなものか、そしてそれをどのように収集していくかと言うことについて説明したいと思います。

社内情報の類別

社内情報といっても様々なものがあります。
社内情報には、「会社の今期方針」、「決算情報」、「システムの稼働状況」、「先輩社員が直近一ヶ月で遅刻した回数」など様々な種類のものがあります。
まずは、どんな情報があるかを、いくつかの観点からみていきましょう。

■ドキュメント化されているかどうか
ドキュメント化されているかどうかの観点で、社内情報を以下の2タイプに分けることができます。

1. ドキュメント化されている情報(社内に何らかの形で存在している)
2. ドキュメント化されていない情報(人の頭の中にしかない)

ドキュメント化されているかどうかによって収集の難易度が変わってきます。気になっている情報があるとき、それがドキュメント化されているかどうかを気にしてみると情報収集の助けになります。

さらにドキュメント化されている情報についてはその目的によって、以下のように4つの種類に分けることができます。(秘書検定より)

・稟議書:決済や承認をもらうことを目的とした文書
・報告書:結果や経過、事実などを報告する文書
・通知文:経営幹部や上長が社員に命令や支持を伝えるための文書
・案内文:お知らせや案内などを伝える文書

探しているドキュメントや取得したドキュメントがどんな種類の情報なのかを意識するとより良い情報収集ができます。
その他、以下の情報が参考になります。

■アクセスレベル
ある程度の規模の会社であれば社員ごとに情報の開示レベルが定められています。従業員の所属や階級などによってアクセスできるかできないかが決まってきます。

■情報の用途
情報の用途によっても、社内情報を以下のように分類することができます。

・仮説を出すための材料(会社としての課題感や現場でのオペレーションなど)
・仮説を検証する(自身の論を補強するファクトなど)
・現状を把握する(日々の売り上げやシステムの稼働状況など)
・自身、組織の今後を知る(組織の方針や長期計画など)

自身で集めるべき情報

ここまで見てきたように、いくつかの観点から社内情報はいくつかの種類に分けることができます。
接している社内情報、これから得たい社内情報がどういった種類のものかについて把握しましょう。

さて、先ほどから言っている通り、日々の業務を円滑に進めたり課題を解決して成果を出すためには日頃の情報収集が重要です。
主に以下の5つの社内情報は自身の足を動かせば手に入る確率が高く、自身で収集していくことができる重要な情報です。

1. プロダクト、組織、マーケットの課題
2. 各種重要指標の数字感
3. 組織の計画・方針
4. 過去の起案
5. 異なる組織の現場感

1. プロダクト、組織、マーケットの課題
「課題」は仕事のタネです。
何か成果を出したい場合は課題を収集していく必要があります。
こうした課題は、ドキュメント化されている場合もありますが、多くの場合ドキュメント化されていません。つまり誰かの頭の中にある場合が多いです。さらに課題に対峙している本人は課題であるという認識がない場合もあり、把握するのはなかなか大変です。
これらの課題(社内情報)を収集するに当たっては、様々な人(社内外問わず)にヒアリングを行うのが大事です。

2. 各種重要指標の数字感
優秀なマーケターは会社の重要指標について直近の数値を空で言えると言います。
現在ほとんどの会社はKPIマネジメントを行なっているので、それらが現在どうなっているのかは把握しておきましょう。
(以下の記事はKPIについての解説記事です。)

それらのKPIが過去好調だったのかどうか、直近では悪化なのか好調なのか、それらの原因は何なのか、それらの数値に自身が取り組むべきことが隠れているかもしれません。

3. 組織の計画・方針
会社によりますが、「組織の計画や方針」は上位の組織によって承認されることが多いので、ドキュメントとして存在していることが多いです。
上司に言えば出てくることが多いでしょう。これらの資料をベースに数ヶ月後、数年後に何が起こるか、何をすべきかを考えましょう。
追われる人生よりも、追う人生の方が良いかもしれません。

4. 過去の起案
私たちが会社で何かをしたいと思った時(特にお金が必要な企画を推進しようと思った時)、大抵上司であるマネージャーから決済をもらうために自身の企画を資料にまとめてその可否を問うということを行います。
結果として、自身の作業時間を確保させてもらったり、必要な費用を預けてもらったり、そもそも企画自体をボツにされることがあります。
そうした企画を行なっていく際に参考になるのが、過去の起案資料です。
多くの場合これらの情報はドキュメント化されており、これらの起案資料には以下のような情報が詰まっています。

・どのようなレベル感の資料を作れば良いのか(いくらもらえるのか)
・どのような情報が重要視されるのか
・過去にどんなことが企画されたのか
・組織としてどんな課題に向き合っているのか

さて、肝心なこれらの資料の入手方法ですが、多くの場合起案者のローカルPCに入っていることでしょう。
過去にどんな起案があったか、それは誰からのものか、を整理して情報を取りに行きましょう。

5. 異なる組織の現場感
もしデータサイエンティストであれば、事業組織に単身乗り込むか、データサイエンス推進を行う部署に所属する形で業務に関わることが多いかと思います。異なる組織で働いている人にどのように働いているのかを聞いてみましょう。
もし、あなたがデータサイエンティストであれば「エンジニアリング」、「マーケティング」、「ロジスティクス」、「品質保証」、「商品企画」といった部署は協働の可能性が非常に高いでしょう。程よくデータが溜まっており、データサイエンスの知見によって、現状の不を解消できる場合が多くあると思われます。
また、余裕があれば営業組織とも交流してみましょう。驚くような発見や会社がどのようにお金を生み出しているかをよりリアルに想像できるようになります。

インデックスの作り方

情報収集で重要なのは、自分の頭の中に適切なインデックスを作るということです。このインデックスをうまく構築できれば、情報収集がより効率的になります。

■インデックスとは
元々は本の末尾などにある、「索引」を指す言葉です。
この索引を適切に作ると本の内容を覚えていなくても、目的のページや情報にたどり着くための「糸口」を用意しておくことができます。
社内情報に関しても適切な「インデックス=どこに行けば目的の情報が得られるか」を作ることによって、情報自体を覚えていなくても情報にアクセスすることができるようになります。

■組織図をベースに人をインデックスする
おすすめなのが、組織図をベースに自身の頭の中にインデックスを作成することです。組織によって持っている情報の質が異なります。そのためどのような情報があるかを組織に紐付けてインデックスしておくと良いかもしれません。
自分の組織にいるメンバーがどんな情報を持っているかについてインデックスを作っておくことも重要です。

実はググれる情報もある

さて、ここまで社内情報はググれないということをクドクド書いてきましたが、実はググれる(=検索できる)情報もあります。以下のようなリソースからいくつかの社内情報はググれます。

社外公開情報:投資家向け情報や、記事へのインタビューなど、文字通りググれる
共有のファイル置き場:共有フォルダや各種クラウドサービスの共有ファイル(Google ドライブ、Dropbox、Microsoft OneDriveなど)
情報共有ツール:QiitaやConfluenceなど
タスク管理ツール:trelloなど
開発ツール:GitHub、Gitlabなど
コミュニケーションログ:自身のメールボックス、チャットツール(Slack、チャットワーク、Microsoft Teamsなど)

上記のようなリソースも貴重な社内情報源です。この記事では上記のようなリソースを「社内情報リソース」と呼びます。
このような社内情報リソースから「報告」、「共有」、「案件」、「スケジュール」、「計画」といったキーワードで検索してみると重要な資料が見つかるかもしれません。

フローチャートで理解しよう

以下のフローチャートは、ここまでの話をまとめて「目的の情報入手までに何をすれば良いか」を示してみたものとなります。参考になれば幸いです。

社内情報と社外情報を組み合わせて活用しよう

ここまで、社内情報の収集方法についてまとめてきましたが、当然社外の情報も活用すべきです。

欲しい情報を入手して適切に判断を行なっていくことがビジネスでは重要となります。

今すぐ始めよう!

ここでは、このテーマを深掘るためにすぐにできるアクションプランを書いています。

1. 社内で入手可能な資料にはどのようなものがあるか考えてみましょう。いざという時にそれらの資料を参照できるようにインデックスは作れているでしょうか。

2. 同じ部署の人、異なる部署の人をランチに誘ってみましょう。話を聴きながらどんな課題があるか、どんなオペレーションを行なっているかを整理しましょう。事業のタネを見つけることができるかもしれません。

3. 先輩社員や上司に過去の起案について聞いてみましょう。過去どのような起案があったか、それらのうちどれが承認されたか、起案資料があればそれも見せてもらいましょう。

以上、お読みいただきありがとうございました。以下、おまけ情報です。


おまけ その1 情報量を適切に保とう

私自身は、「把握している情報は多ければ多いほど良い」と思っていますが、慣れないうちは大量の情報に触れると整理できずにパンクする可能性があります。

そんなとき「適切な情報量」というのを意識すると良いかもしれません。

ビジネスにおいて情報は判断の拠り所という意味合いが大きいので、「今、自分が何を決めたいと思っているのか」「そのために必要な情報は何か」という問いを明確にした上で情報を収集するのが良いかもしれません。

おまけ その2 「管理情報」と「現実情報」

上村敏彦氏(「マネジャーのジレンマ」より)によると、マネージャーの観点から社内の情報を分類すると「管理情報」と「現実情報」に分かれると言います。

「管理情報」は売上報告書やガントチャートなどの進捗管理票に表される管理用の数字のことを指しており、「現実情報」とは、現場に身を置き、現場を観察することで得られる生の情報を指します。

マネージャーとして「管理情報」と「現実情報」にギャップが生じるところを中心にみていくことが重要だと言います。報告書などの管理情報と、実際に部下から聞く情報に差がある場合があり、そうしたギャップをしっかりキャッチアップするのがマネージャーの1つの仕事となります。

おまけ その3 SQLがかけても事業の分析はできない

データサイエンティストはSQLが得意です(たぶん)。
しかし、多くの企業の場合テーブル情報は綺麗に整理されていません。
「カラムの情報とそれがどのように生成されているか」はまさしく社内情報です。ドキュメント化されていれば良いのですが、最悪誰かの頭の中にしかない場合もあります。
ここで述べたような点に注意しながら、情報を収集していくことによって適切な分析を行うことができます。

多くの場合、ビジネスの知識とSQLなどの分析スキルが組み合わさって適切な分析ができます。

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