すれ違いの途中

好きな人が目の前で泣いていた。昔なら一緒に泣いて慰めたと思う。

でも、自分にはこれ以上何もできないしな…という妙に冷静な私がそこにはいて、恋愛感情がほとんどないことは確か。愛情があると思っていたのは、ただの情けだったのか。

そう思うと、自分がこわくなった。

なんで、いつからそうなっていたの？

もう一緒にいて9年になるから、恋愛感情が落ち着くのは分かるけど。

私といても、私が何を考えているか分からないという。幼少期の家庭環境の影響で自己肯定感がとても低い人で、自分が居なくても良いんじゃないかって思うって。

最近は自分に包丁を突きつける夢を見て、毎日死にたいと思うって。

それを聞いても私は、うまくかける言葉が見つからなくて、ただ背中をさすっていた。

半分は、彼に死ぬ勇気がないことを私が知っているから。

半分は、そんなこと言ってもこれからも私と一緒にいるだろうというおごった気持ちから。

あと、率直に言ってしまうと…なんでそんなことを言うか理解できなかった。

私自身何かが変わったつもりはなくて、彼自身の問題だと思った。冷たいと自分でも思うけど、今私にできることは、言葉どおり話を聞くことだけ。

落ち込むきっかけを与えた私が悪いのは間違いないのだけど、自分で乗り越えなきゃいけないときもあると思ってる。私が支えるのには限界があって、自己肯定感が低いことや自尊心が低いこと、最後に何とかできるのは本人自身の問題だから。私が今まで何年間も寄り添って支え続けても、今結局それはそのままだった。

だからあとは本人の問題。

それから私に出来ることがあるなら、誰か教えて欲しい。私にできたことはもうなかったと思う。

これからも家族であることに変わりはない。家族の仲は良い方だと思うし、何かあれば話し合いで今まで解決してきた。

だけど、初めてこんなにも冷めた感情で、泣いている彼を見下ろしていた。何が違ってしまったんだろう。

一度食い違ったものは戻らないんだろうか。

表面上はこれからもそれなりにやっていける。けど、深い部分が繋がらなくなってしまった。

私のせい？私もあなたが本心でどう思ってるか、分からなくなったよ。

もう戻れないのかな。お互い疲れすぎたのかな。

子はかすがいって、昔の人はほんとに上手いこと言うね。少なくとも子どもが大きくなるまでは。