Take Me Hand

ベッドに入ってから一体どれだけ時間が経っただろう。窓枠に切り取られた月明かりは、カーテンと共にゆるやかな風に揺れた。
夢の中はいつも同じような月夜だ。
暑さも寒さもなく、ただ不安がある。
私はそれが夢だとほとんどの場合見抜いてしまう。

するりとベットをすり抜け、寝静まった家の裏戸から草むらを掻き分けて、私はありもしない川辺へ降りて行く。流れる小川の水面が月明かりを反射して輝く様を、今まさに見ているかのように思い描くことができる。蛍が飛んでいる。
その川辺の岩に腰掛けている人影がある。裸足を流れる水につけてどことなく嬉しそうな横顔が見える。ずっと昔に私が書いた物語の中で共に冒険した友人たちだ。彼らはあの頃と何も変わらないで、まだ旅の途中かのように見える。少年は私に気付くと人懐っこい笑顔を向けて言う。「遅かったね、やっと気が済んだのかい?」と。


絵の勉強をしたり、文章の感性を広げるため本を読んだり、記事を書く時のカフェ代などに使わせていただきます。