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新型コロナ感染者の全数把握をやめるのは悪手だと思う

雨音が結構強いですね。帰路も足元に留意してお帰り下さい。

さて、……

標題の通り、政府は24日に新型コロナ感染者の全数把握見直し公表した。これは、医療機関や保健所の繁忙を訴える声に応えてその負担軽減を図るというもの。でも、これは良くないと考える。

まず、政府はなぜこんなことを言い出したのか。
・保健所のマンパワーに限界がきているから
・医師の手間が多いから

等々の理由が述べられているのだけど、手間暇を減らす努力をどれくらいしたのかが伝わってこない。

マイナンバーカードの健康保険証利用も始まっている。ある病院で、マイナンバーカードをノータッチで読み込める機械が設置されているのを見て感心した。

機械で読み取れるものは機械に任せ、医療機関が入力しなければならないものを減らす。その取り組みがどれくらい真剣にやられたのか。プライバシーを盾にマイナンバーカードの利用に反対する意見もあるが、もうそういうことを言っている場合ではない。

私は、感染者の把握には、感染者への治療と感染者から別の人にうつるのを防ぐ予防の2つの目的があると思っている。全数把握をやめると、傾向は分かるのだけど、具体的な患者対応が弱くなる。

特に、軽症者が自宅療養中に急に重症化してもその把握ができず結果として見逃される可能性には留意が必要。というのは、重症化リスクが低いと判断された感染者について、保健所がその名前や連絡先を把握できず、健康観察の対象外となってしまうからである。

新型コロナ感染症は、診断した医師が全感染者の個人情報(氏名、性別、生年月日、住所、電話番号等)を直ちに保健所に届け出る義務がある。これは感染法上の定めによるもの。

これらのデータは医療機関の他、保健所によって政府の情報共有システム「HER-SYS(ハーシス)」に入力される。入力されたデータは、保健所が実施する健康観察や入院の要否判断等に使われている。

しかし、今回の政府の公表を受けて都道府県が全数把握を見直せば、医療機関や保健所は重症化リスクが低いと判断した人について、HER-SYSへの入力をしなくてもよくなる。

そして、軽症の感染者が発生届の提出対象でなくなれば、保健所はその感染者の連絡先が分からず、当然連絡もできなくなる。そうなると、感染者は独力で体調管理をしなければならなくなる。

政府はこのような体調の急変を想定し、それに備えた各都道府県による相談体制の整備促進を図るとしているようだけど、既にキットで陽性となった人からの保健所への電話が繋がらない状況から考えると、実効性が疑わしい。

このような変更は、感染者の動向把握にもそれなりに影響が出るのは必至。都道府県が発生届の対象を重症者に限定すれば、医療機関等は政府のシステムに入力義務のある対象も限定されるのだから当然である。

これに対して政府は、都道府県に対して感染者の総数と年代別の内訳について毎日公表を求め、それにより全国の新規感染者数と年代別の増減について引き続き把握する意向のようだ。

でも、そういう面倒な場合分けをするくらいなら、今まで通りでも良いのではないかとの思いが浮かぶ。変更はリスクを伴うからだ。

少なからぬ自治体が、当面様子見するのも当然という気がする。

お読み頂き、ありがとうございました。

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