マズい理由探しも創造的な取り組みだと考えるのだが
台風5号が朝8時半頃に岩手県に上陸、東北地方を横断中。大雨が降っているところもあり、進路近辺の皆様の安否を心配しています。どうか無理をせず、田んぼや川を見に行くことなく身の安全を第一にお過ごしください。
さて、……。
私の学生時代から社会人の初めの頃というのは、バブルの絶頂期であった。それもあって、グルメ漫画と言われるジャンルがもてはやされていたように思う。どのマンガ雑誌にも、その系統のマンガ作品が一つくらいは掲載されていた。
正直なところ、それらを読みたくてマンガ雑誌を手に取っていたわけではないのだけど、ついでに読んでいる内に食への興味もそれなりに持つようになった。
ただ、貧乏な生活が身につき、贅沢には罪悪感を持つ小心者であった私は、例えばボーナスが入ったからといって一食ウン万円もするようなフルコースやお寿司屋さんに行くようなことはなかった。
せいぜい洋食屋で数品頼む、丼物のランクを上に格上げして発注する程度。普段は日常的な範囲のものを、より美味しく食べたいと出汁や調味料の工夫を怠らないようにしていたというのが実態。庶民的と言われたらそれまでである。
最近は、これが少し変容してきている。もちろん、マズいものを食べたくなったというのではない。
昨今では、外食産業もコンビニ業界もより美味しいものを作ろうとしのぎを削っている。余程の冒険をしたのでなければ、美味しいものばかりになったという背景がある。そのため、未経験の味わいを試したいという欲が強くなってきている。
具体的には、独特のスパイスを加えたもの、ニンニクを多く入れたもの、激辛なもの等である。これらは舌がまだお子様の娘とは相性が悪く、家庭食では食べられない。そのため、土日の昼間等で自分しかいない時に、買って帰るか家で自ら調理をするかしている。
幸い、有名店がコンビニ等とコラボして、店の味そのものではないにせよ、割と近い味のものを弁当にしたり、冷食として販売したりするようになった。こういうものを利用して、未経験の味を試すようにしている。
私の父は、質実剛健だったこともあり「男子たるもの、食べ物がうまいのマズいのとでかい声で言うのは恥ずかしい」という価値観を持っていた。これは極端だと思うし、今はジェンダーの面でも問題発言であろう。
ただ、言いたいことは分かる気がする。少なくとも、毎食ごとに心が震えるほど感動するような美味を味わっていると、本業の方がおろそかになるような気がするし、そちら方面に入れあげると大抵身上を潰す方向に進む気がする。
極端に言えば、美食には麻薬性があると考えているからだ。何事もほどほどが大事だと思っている。
なお、私にはたまたまマズいものを食べると「これ、何でまずいんだろう」とそれを探求する悪癖がある。マズい食べ物を作るのは食材への冒涜だと思っているからだが、この昔からの癖(探求心)は意外に衰えていない。
「何が足りないのか」「何をすればまだマシにできるのか」を考えるのは、極めて創造的な取り組みだと自負するが、それを表に出せないのが残念である。お店でやったらケンカになるだろうし、周囲のお客樣の気分を害するのは必至だろうし。
マズい原因探しに自分の味蕾をフル活用するのがよいことなのか、それは分からない。
お読み頂き、ありがとうございました。
読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。