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看取りを体験する(その3)

今日も目覚めはイマイチでした。外は晴れていて温かかったと思います。この一週間のできごとを改めて記録したり、昔頂いた実家の売却に関する資料を読み返したり、チョコザップで運動したりと、それなりに充実した一日を過ごしました。

さて、……。

今回も以下の記事の続きである。ただ、深刻な話をし続けるのもどうかと思い、今回は半分息抜き的な内容を挟んでいる。但し、虫注意である。

翌朝、早くに目が覚めた。やはり心配事があると落ち着かないせいであろう。少し血圧も高いように感じる。「ああ、父の時もそうだったな」と思い出してしまった。

取り敢えずダイニングに行って、水を飲もうと思った。すると、戸棚の前に立派な黒Gが目に入った。

一気に目が覚めた。最初は死骸だと思った。私がダイニングに入っても逃げなかったからだ。しかし、さらに近づくといきなり動いて石油ストーブの陰に回り込んだ。

(家の中に食べ物はないはず。食べた後のゴミは都度持ち帰るようにしていたし、惣菜を入れたトレーも必ず洗っていた)……と1秒程度で考えた。しかし、奴はあれだけの体躯を持つまでに成長している。

あり得ない! と思いながらゴミ袋などの雑貨が置かれたメタルラックを見ると、ゴキジェットがあるのを発見した。すかさず掴んで、ストーブの裏側に向けて噴霧した。すると、ヨタヨタと出てきた黒Gは走り回ることもなく私の前で力尽きた。

殺虫剤の効果に感嘆しつつ、傍に古い投げ込み広告紙があったので、それに乗せてトイレで水葬に付した。

この間、母のことは全く脳裏に浮かばなかった。目の前のことに集中する効果を実感した。

この騒動の後にシャワーを浴びて、仏壇に手を合わせた。阿弥陀如来のお姿を拝し念仏を唱えた後、父の位牌に語り掛ける。
「まだその時でないなら母をお守り下さい。もしもその時ならよろしくお迎え下さい」。

あなたが私の語り掛けをどう受け止めたのかは分からない。母親の命を守ることのみ祈るべきではないか? との批判は当然あると思う。

でも、卒寿を既に超えて女性の平均年齢を持ち上げる側に回った。しかも、昨夜病院で一緒に過ごした中で、呼吸がかなり辛そうに聞こえたのも事実。そういう中で、なお生きることだけを願うのが孝なのか。私にはそう思えなかった。

病院に出す書類を再確認して家を出た。幸い晴れて温かい日差しを浴びながらバス停に向かう。バスを待っているとスマホの呼び出し音が鳴った。バスが迫ってきていたが電話に出る。

「辻さんのお電話ですか。病院◯階ナースステーションの……」
「すいません、もうバスに乗るので手短にお願いします」
「お母様の心拍数が下がってきているので、病院に……」
「今向かいます」

そう言って電話を切ると、バスは既にドアを開けていた。一気に血流が早くなるのを感じながらバスに乗り込んだ。

(続きます)

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辻六道🥚
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