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いつもと違うルートを歩いて思い出したこと

昼はそこそこ暑くなりました。夏が近づいていますね。

さて、……

私の場合、通勤路は基本的には同じ道を通る。たまの郵便局への立ち寄りやその他の用事がない限り、最短距離を選んでしまうのは人の慣いであろう。

ただ、先程ふと思いついて、一本ズラした通りを通ってみることにした。その時は単なる思いつき以上のものではなかった。

その道を歩いていると、一軒の古い居酒屋があった。居酒屋というとチェーン店を思い浮かべるが、その店は違う。明らかに地域に根ざした昔からのたたずまいを保っていた。

昨今のコロナ禍の影響だろうけれど、入り口が三分の一ほど開いていた。私は1人で外で酒を嗜む癖は持ち合わせていない。当然通り過ぎようとした。

その瞬間、風向きが変わった。その影響だろうか、その店から居酒屋独特の香りが漂ってきた。その店の壁やテーブルに染みついた出汁と酒がかもし出す何とも言えない香り。昔はこのような香りを発する店があちこちにあったな、と思い出した。

それは出汁が酸化してそれにアルコールの酢に変わりかかったにおいがかぶさったような香り、とでも表現すれば良いのだろうか。私の国語力の限界なのだろうけれど、言われて「ああ!」と納得していただける方が1人でもいないかと思う。

その香りは、まさに店が古くから営業していることの証であるように思う。

会社に入って以降、幾多の飲み会に出席してきたけれど、この香りの漂う店というのはかなり珍しい存在、そうはなかったと思う。だからこそ、私もこの香りに反応してしまった。

と言いつつ、結局は店の前を通り過ぎただけではある。それでも、この香りが外国人からすると芳香なのか悪臭なのかには若干興味がある。マツタケがカビのにおいだという国もあり、感じ方はお国柄で千差万別だと思うからだ。

なお、自分が子どもの頃に連れられていったおでん屋さんでもこの手の香りが漂っていた。しかしながら、子供心に「ここは子供がいるべき場所ではないのではなかろうか」と感じたことは、今でも記憶に残っている。

揮発したアルコールに対して、子供心にも本能的に体に良くないと判断したのだろうと思うと、ちょっと面白い気がする。

今風のおしゃれなお店で酒を飲むのもアリだけど、古くから店を構えた居酒屋で杯を上げることもたまにはやりたいな、と思ったことであった。

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