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「セクシー田中さん」の小学館の調査報告書も読了したうえで私の考える再発防止策

今日は明らかに夏の日差しでした。気温も上がり、大抵の人が半袖シャツを着ています。夏は来ぬです。蚊との戦いが本格化しますね。

さて、……。

小学館の調査報告書

「セクシー田中さん」著者の急逝を契機に、2つの調査報告書がアップされた。一つは日本テレビが5月31日に自社サイトにアップしたもの、もう一つは6月3日に小学館が自社サイトにアップしたものである。

日本テレビのものについては、読み進めながら以下の4つの記事を書いた。

小学館の調査報告書についても書こうかと思ったけれど、ファクト部分において小学館側から見た事情はあるものの、決定的な相違点までは見出せなかった。強いて言えば、原作者と小学館の間のやり取りがより生々しくなっている点、契約についての記述が日本テレビのものよりも詳しい点は挙げられる。

余談になるが「私の読みやすさ」という基準では、小学館のものに軍配が上がる。それには2つ理由がある。

一つは、一文が短めであること。日本テレビのものは、一文内にいろいろなことを詰め込んで語ろうとしており、読んでいるうちに誰のことを言っているのか、主語って何だったっけ? という状態に陥るところが多い。

以前から私の記事を読まれている方はお気づきだと思うが、私の記事は基本的に短文が多い。これは私自身の脳が加齢によるメモリー減退を来していることに起因する。

長文は脳のメモリーを消費する。それは読み疲れの原因ともなるので、私はできるだけ避けている。それが結果的に読者の脳のメモリーへの負荷軽減にも役立っていると思っている。

もう一つは、関係者の数が少ないこと。実際は主な登場人物に限れば大差ないのだけど、日本テレビはどうしても関係者が増えてしまう。正直なところ、大筋に影響しない人はカットしてもよかったのではなかろうか。

両社とも発生した事象がよろしくないと認識したからこそ原因究明と再発防止策を考えたはず。そのこと自体は褒めるべきだと思う。

ただ、いずれの調査報告書も「時間を確保し、担当者の業務負荷を軽減し、コミュニケーションを取るという当たり前のことができていなかったので今後はそれをやりましょう」と言っているように感じた。

なお、契約について念のために付記しておく。原作の使用許諾については契約が成立していたというのは日本の民法が意思主義(=口頭での合意も契約成立)だからヨシとするも、契約書の取り交わしには至っていなかったことが確認できた。

お金を払うために起票する支払伝票には、請求書か稟議書の写しを添付して決裁を得るのが普通だと思う。以前の記事にも書いたが、日本テレビがお金を払ったのだとすると契約書もないのに何を根拠に支払うのか? ということになる。

まして、もし払っていないのだったら、金を払う手続も進めずに結果的に原作者を追い詰めたことになる。この点はどちら側も調査報告書に明確に書くべきだったと思っている。

再発防止に関わる私なりの提言

「キャラが勝手に動き出す」という言葉。これは割と漫画のあとがきにある。漫画家さんの創造物であるはずの登場キャラが、やがて自ら意思を持っているかのような存在になるのだという。

だから漫画家が何の気なしにあるセリフを言わせようとすると「私、こんなことを言わないもん!」と文句をつけてくるという。

もちろん、リアルにそんなことは起こらないし、現実にそんなことが起こると主張し始めたらしかるべきところに受診してもらう必要が生じる。でも、この手の話は複数の漫画家さんが言っている。

確固とした世界観が存在し、そこにキャラを設定する。最初は漫画家が意図した通りに動くのだけど、キャラの造形がしっかりしてくるにつれて、まるで独立した人格を持つかのようになる。そして、自ら動き始めるのである。

その世界観を共有できていれば、原作とドラマの違いがあっても、同じベースで話ができるのではないか。また共有が完全にはできていなくても、ある程度までできていれば、原作者が認容できるパラレルワールドを展開できるのではないか。

多くの漫画家さんは、キャラの人物造形をある程度決めてから漫画を描き始めるはず。だから私からの提案としては、制作サイドにおいて原作の漫画を読み込んでキャラの逆造形を行う。それを原作者に確認してもらうというのはどうかと考える。

「このキャラはこんな背景を持ち、こういう性格でこういう行動をする。○○とは微妙に会話が成り立たない。実は△△に並々ならぬ知識があって……」みたいなものをキチンと書けるか。これが書けて原作者から合格をもらえたならば、世界観の共有はできていることになる。

そして、それで不合格となるようであれば、潔く見切り千両だと割り切る。最初のスジ悪は最後までスジ悪になることがほとんどであり、これは見切らねばならない。

このような手順を踏めば、少なくとも今回みたいな原作者と制作サイド間で不可逆的な相互不信に陥る可能性はかなり下がると考えるのだけど、いかがだろうか。

以上を以て「セクシー田中さん」調査報告書については一区切りとしたい。

お読み頂き、ありがとうございました。

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。