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迷える翻訳者

「心に刺さる」という表現はあれど、
それは最近では感動を表すときに使われる言葉であり、
誰かに言葉を届けようとするときに
それが人を傷つける刃となってはならないと思う。

人見知りというわけでもないし、おしゃべりも好きなのだけど、
自分の何気ない一言が誰かを傷つけるのではないか、
知らぬ間に誰かの心を縛りつける呪いの言葉を
発してしまうのではないか、と恐れることもある。

ケンカをしたって自分の感情にまかせて
言葉をぶちまけることはできない。
怒鳴り散らせば心がスッキリするのかもしれないけれど、
それで言いたいことが伝わるのかといえば、
「なんか怒っていることはわかった」で
終わることのほうが多い気がする。

伝えるならば一番響く言葉を選びたい。
そう考えることは、
翻訳者としても間違ってはいないだろう。
だけど、どんなに心を砕いても、
きっと誰かを傷つけてしまうことはある。
だから、そのことだけは忘れずに
でも、あまり臆病にならないように
今日も原文と向き合おうと思う。










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