目覚めを誘う匂い

 米を研いでいる時にふと、後輩が言っていた言葉を思い出した。
「予約炊飯の匂いで目が覚める」
というものだ。
 確かに予約炊飯を入れると、その音と匂いは目覚めを誘う。そんな朝は「ふふっ」と笑いながら活動を始める。なぜだか不思議といい一日になる気がするからだ。
 ご飯ってやっぱり生きる原動力だよなって私は思います。フレンチトーストを仕込んで寝た夜なんかは朝起きるのが楽しみで仕方がない。朝起きるのが楽しみということは、明日が楽しみってことで、それが連なる毎日を私は愛おしく思う。この匂いもその一部で、他には何かあったかなと思いを巡らせていく。
 そんな中で思い出したのが、大学一年生かそこらの頃の短歌の歌会だった。
 どの歌が好み?的な投票があって、私は「おばあちゃんが小豆を煮込んでいて、その匂いで目覚める」というような歌に投票した。司会が「どうしてこの歌を選んだの?」と私に聞く。
 え、だって小豆が茹で上がる匂いで目覚めたくない??正直いって短歌の技法とか作者の意図とかはよくわからない。ただ、その風景をその朝を想って、私は理想的だと感じたのだ。その空気を。祖父母とあまり親交のない私にとってはおばあちゃんが朝早くから準備してくれているというのもグッと来たのかもしれない。
 朝起きるのが楽しみだと、毎日が楽しみになる。そんな生活を続けていきたいなぁと思って、明日もお仕事を頑張るのです。

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