離婚協議前-(2)有利になる情報を集める
前回は離婚協議を始めるまえの「気持ちの固め方と準備」についてお話しました。今回は、協議が始まって以降に必要となる情報を集めておくことについてお話したいと思います。
今すぐにでも別居をはじめて離婚の話を進めたい方、もう少し待ってください。少なくともこの記事を読むくらいは待ってください。
それでは説明を始めます。
1.離婚事由の証拠の確保
まず、最悪の場合、離婚裁判になったときに離婚できるかということを見極めるためにも、民法の条文を確認しましょう。離婚の理由として裁判所に認めてもらえるものは、下記の一~五の5つの理由(法定離婚事由)です。一から四にあてはまらないものはすべて、五に該当しないと離婚理由として認められません。性格の不一致などがそうです。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
これらの離婚理由があるとあなたがそう思っているだけではだめです。裁判官がそう判断できるだけの材料、つまりこれらの証拠情報が必要です。
上記の五に該当する、性格の不一致やモラルハラスメントという理由はなかなか裁判官には認めてもらいにくいです。自分がこうだと言っても、相手が離婚したくないときには、そんなことはないと否定されてしまうことがその一つの理由です。そのような場合でも、相手に事実否定されないように確たる情報を集めておく必要があります。また、「本当に重大か」ということを裁判官に理解してもらう必要があります。婚姻関係を続けるあなたの努力が足りないと思われてしまわないように注意が必要です。私の場合、離婚調停と離婚裁判において相手と合わない理由を10程度列挙しましたが、どれも決め手には欠けると、相談した何人かの弁護士に言われてしまいました。合わせ技でなんとかいけるか、というところでした。小さな理由を積み上げても大きな理由にはなりません。証拠集めも量より質が重要であると考えてください。
(とはいえ、実態を示す写真などを用意しておくことは、相手との交渉・協議のうえでは有用でしょう。説得材料になりますので。)
では、不倫の場合なら簡単に離婚理由となると思いやすいですが、何も知らない裁判官が認めるとなるとなかなか難しいのが実情とのことです。メールや電話の履歴があったとしても、不貞行為、すなわち性行為をしているとは判断できず、単に仲がよい知り合いだと開き直られかねません。ラブホテルに行ったときの写真が撮ってあるなどの情報が求められます。また、探偵さんによれば、その場合もホテルに入っただけでなく、出てきたところも把握しておくことがより強い証拠となるそうです。また、不倫相手の家に行ったという写真だけでも十分とはいえません。送ってすぐに帰宅したので不貞行為はなかった、と反論されてしまうかもしれません。相当の時間、不倫相手の家にいたという証拠とすることが望ましいです。
探偵に依頼する場合、結構なお金がかかります。1回、15~20万円ぐらいはかかると思ってください。ですので、たくさん調査ができるわけではありません。この日に調査を行うという日を見極めなければなりません。別居してしまうと、相手の日常の生活行動などが分からなくなってしまうので、別居してから探偵調査をするのはハズレが多くなるのでお薦めできません。
2.財産分与のための情報の確保
離婚理由の情報集めと同時に、相手側の財産の情報集めも大切です。この情報がないと財産分与のときに不利になりかねず、実際には何百万円も損することになりかねません。銀行口座預金であれば、銀行名、支店名、口座番号、名義人名、預金額の全てを把握しておくことが望まれます。離婚裁判のときには裁判所が調査をかけることができますが、銀行名もわからなければ調査のしようがありません。また、私が聞いたところによると、銀行名と名義人名だけでは調査がしきれないことがあるとのことでした。少なくとも支店名までは把握しておきましょう。
保険や不動産、物品も財産ですので、同様に情報が求められます。保険であれば、どの保険会社のどのような種類の保険で、証券番号がいくつか、いくらの保険金額、未払金がどれだけあるかです。
3.別居と情報把握のタイミング
ところで、別居期間が相当に長いということは、法定離婚事由の五にあてはまるものです。ですので、一から四の法定離婚事由ではない場合は、一般論として、できるだけ早く別居を始めた方がよいといえます。
ただ、別居を始めてから上記の情報を集めようとして、私は大変苦労しました。両者のタイミングを上手に見極めていただければと思います。
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