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「新型コロナ武漢ウイルス研究所漏出説」は陰謀論か合理的な告発か?【解説編】

前回のnoteで翻訳を公開した、英国人科学ジャーナリスト、ジョン・ウェイド氏の長文記事「新型コロナウイルスの起源:武漢でパンドラの箱を開けたのはヒトなのか自然なのか?」。翻訳や原文を読まれた皆さんのご感想はいかがでしたでしょうか。

湧き上がっては消え、消えては湧き上がる、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所(WIV)への疑惑――。世界の科学者は遺伝子解析の結果などを根拠に研究所漏洩説を陰謀論として強く否定してきましたが、同記事はそれに対し真っ向からチャレンジする内容です。

ウェイド氏の記事が発表された数日後には、「中国人研究者はパンデミック前に生物兵器の議論をしていた」と題された英文記事が発表されたこともあり、日本のメディアや外交関係者にも、ウェイド氏の記事を強く支持する人が出ていると聞いています。

一方で、ウェイド氏に反論する記事も出ています。しかし、どうあがいたところで「新型コロナは自然変異の過程で生まれた」というストーリーより「新型コロナウイルスは中国が作ったものだった!」というストーリーの方が魅力的です。どの反論も、記事としての魅力はベテラン科学ジャーナリスト、ジョン・ウェイド氏に劣ると言わざるをえず、そのことが冷静な判断を難しくしている部分もあるように思います。

以下、この記事に関するわたしの評価と解説です。

総評

新型コロナの起原には、ウイルスが変異をくりかえすうちに動物の宿主から人間に感染するようになったとする「自然変異説」と、遺伝子操作によって研究所内で作られた新ウイルスが研究者に感染したなどの理由で広がったとする「研究所漏洩説」の2つがあります。どちらの説に関しても確たる証拠は得られていませんが、科学者の間では自然変異説を支持する声が一般的でした。

本記事では、特に世界の科学者の間では陰謀論として一蹴され、きちんと検討されることのなかった研究所漏洩性を検討することを通じ、

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