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新型コロナを防ぐ「訓練されていない免疫」

最近、日本のメディアで特に耳にするようになった言葉のひとつに「訓練免疫」という言葉があります。ワクチン接種等により、日ごろから免疫が活性化され訓練されていると、新型コロナのような新しいウイルスに出会ったときでも免疫がすぐに働いてくれるという考えです。

そのため「結核の予防ワクチンであるBCGを接種している日本人は新型コロナにかかりにくい」とか「風邪のコロナにかかったことのある人は新型コロナが軽い」とか「インフルエンザワクチンを受ければ新型コロナに対する免疫力も上がる」といった話が日本のメディアにもアカデミアにも溢れかえっています。

しかし、訓練免疫が新型コロナの感染や重症化を防ぐという考えに、違和感をもっている研究者は世界にも少なくはありません。またこの間、「訓練されていない免疫」こそが新型コロナを防ぐ鍵ではないかという論文もたくさん出ています。

以前、わたしも「『風邪コロナの免疫は、新型コロナを防ぐのか?』という問いへの答え」というタイトルで、ドイツのキール大学とケルン大学が世界に先駆けて新型コロナの免疫、SARSの免疫、風邪のコロナの免疫がそれぞれ本当に新型コロナを予防するのかについて詳細に調べた論文をご紹介しました。

もし、風邪のコロナにかかった免疫記憶が新型コロナを防ぐと言うのであれば、若い人に比べてたくさんの風邪にかかった経験のあるであろう高齢者で新型コロナは軽く、子どもでは重くなるはずです。

これは事実とは矛盾するのではないでしょうか。

この論文のポイントを簡単におさらいすると、以下のようになります。

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