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「ペストの墓」の遺伝子解析

スコットランドのカークマイケル(Kirkmichael)という村にある、コーチ・インを改造したアパートに滞在した。コーチ・インとは鉄道が普及する以前のイギリスでもっとも一般的だった宿の形態で、隣接する牧場で馬を休ませながら人間も食事や宿をとれる宿のことだ。ただ、人と馬を泊めるだけでは採算が取れなかったことから、現在ではほとんどのコーチ・インはパブになっており、ロンドンでは今でも宿として機能しているコーチ・インはたった1つだという。

おかしな趣味だと思われるかもしれないが、わたしは国内でも海外でも新しい土地に行った時には必ず「墓地」を訪れることにしている。どこに行っても墓地は緑が多く静かで、学ぶところ感じるところが多いからだ。

カークマイケルでは、街道沿いの村の入り口に村の共同墓地(カバー写真)がある。墓地というのは普通、その街の裏側の外れにあるものだがこれは興味深い。そして、この墓地の北東には墓石が1つも建てられていない一角があり、ここは1348年のペスト大流行の際、大きな穴を設け、葬式も火葬もせず死者を投げ入れて埋葬した場所だという。

Kirkmichaelは今でも人口150人足らずの荒野に囲まれた静かな村だ。ペストはヨーロッパの北はずれのこんな所にまでやってきたのか。


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