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世界が注目!五輪を控えた日本の「反ワクチン度」

1月28日(日本時間)、国内外の反ワクチン問題を追ってきた筆者も、英国営放送「BBCワールドニュース」に出演し、日本のワクチン導入状況と日本人の「反ワクチン度」についてコメントした。この問題についての海外の関心はよほど強いらしく、今週もまた英「エコノミスト」誌の取材を受けた。

新型コロナワクチンの導入が遅いのは、日本だけの話ではない。韓国、台湾など、新型コロナの流行を緩やかに抑えることに成功してきたアジアの国々では、ワクチンの導入が遅れている。オリンピックがあるとは言え、なぜ日本ばかりがクローズアップされるのか?

発端となったのは昨年9月、ロンドン大学のグループが発表した「世界のワクチン信頼度」に関する論文だ。

2015年9月から2019年12月までに世界149カ国、284381人を対象に実施された290のワクチンの信頼度に関するスタディを分析したもので、日本では子宮頸がんワクチンに対する強い反ワクチン運動が起きたことに象徴されるとおり、「世界でもっとも反ワクチン度の強い国」の1つとして酷評された。

新型コロナワクチンの信頼度とは直接の関係はないデータであるにも関わらず、「ブルームバーグ」など海外メディアが同論文を好んで引用し、日本での再流行やワクチン導入が遅れのニュースとも相まって注目を浴びるようになった。

文化的・言語的背景を無視した英語圏の研究グループの反ワクチン度評価には、強い「調査バイアス」がかかっている。

たとえば、日本語では「新型コロナワクチンを接種しますか?」と訊かれるのと「新型コロナワクチンを接種したいと思いますか?」とでは、答える方の心証も異なる。「イエス・ノー」式の質問になじまない日本人にとって、「積極的に接種したいかと言われればしたくないけれど、接種が求められれば接種する」「しばらく様子を見て、良さそうなら打ちたい」といった回答は必ずしも「ノー」を意味しないが、英語では「ノー」と理解されるのだ。

「イエス・ノー」式のアンケート結果に、複雑な社会的背景をもつ日本の反子宮頸がんワクチン問題を結び付け、欧米とは流行状況の異なる日本で根強つ「ワクチン不要論(反対論ではなく)」をもって、日本に反ワクチン国家の烙印を押すことについては強い違和感を感じざるを得ない。

治験データが出はじめた11月以前とそれ以降、世界約7000万人がすでにワクチンを接種した現在とでは、判断材料となるデータ量は異なり、質問に対する答えが異なるのも当然である。

ただ、日本にも世界から「反ワクチン国家」と見られる現状に関し、大いに反省すべき点がある。

これはわたし自身、今回、日本とドイツの両方を軸足にしてパンデミックを追う中で初めて気づいたことであるが、日本では専門家と呼ばれる人たちのワクチンに関するメッセージの伝え方があまりにも不用意、いや、科学的にはあまりにも慎重な点である。

日本は決して反ワクチン国家ではない。

反子宮頸がんワクチン運動が、世界でも歴史上も類を見ないほど大きな成功をおさめたことは事実だが、

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