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無駄な休校をなくすために理解する「抗原検査」の基本コンセプト

日本では学校で新型コロナの感染者が出れば大騒ぎです。1人でも感染者が出れば濃厚接触者の特定が終わるまで「とりあえず休校」という取り決めにしているところも多く、たとえば、9月初めの大阪では、全小中高の約5分の1が臨時休校になっている状態でした。

保健所が忙しすぎて濃厚接触者の特定が終わるまで1週間といったこともあり、隔離の必要のない子どもまでもが長々と学校生活を奪われる状況が続いていました。

子どもの感染者が増えているのは日本だけではありません。どの国も重症化リスクの高い大人からワクチンを接種していったのですから、子どもたちの感染の割合が増えて行くのは当たり前のことです。

国によって大きな差があるのは、ワクチン以外の体制と感染者が出た時の対応です。

ドイツでは、小学校から高校まで学校に通うすべての子どもたちと教職員が、週2回抗原検査を行うことが法律で義務付けられています。5月のロックダウン明けからずっとです。詳しくは後で書きますが、大量に使うので競争が生まれ、コストも驚くほど下がり、精度も驚くほど上がりました。

しかし、日本ではいつまで経っても「偽陽性や偽陰性がある」「自己採取では不正確だ」などと検査の精度だけに注目し、安価で簡便、かつ結果が分かるまでの時間が短いという抗原検査のメリットを無視して、見逃しをカバーしながら抗原検査を活用するための議論をほぼ何もしてきませんでした。

先日、日本でも教育現場で抗原検査を活用していくといったニュースを見ました。しかし、対象となるのは、教職員と症状のある子どもだけです。

わたしは「日本では相変わらず、抗原検査を精度の悪いPCR検査としか捉えておらず、抗原検査の基本的なコンセプトがまったく理解されていない」と非常にがっかりしました。また、パンデミックのはじめに海外から一瞬だけ注目された「日本式」と呼ばれる検査戦略から一歩も前に進んでいなことにも落胆しました。

本記事では、日本では正しく理解されていない、抗原検査の基本コンセプトを解説するとともに、抗原検査を活用することでどうすれば無駄な休校を減らせるのか、つまり、子どもたちの学校生活を新型コロナから守るにはどうしたらいいのかについて解説します。

「抗原検査」は質の悪いPCR検査にあらず

はじめに、抗原検査は安かろう悪かろうのPCR検査の代替品ではありません。検査の精度だけで言ったら、抗原検査はPCR検査に劣ります。劣ると言っても、パンデミック開始から1年半以上の経過した現在では数々のすぐれた新型コロナウイルス用抗原検査が開発されています。ワクチン接種が完了するまでの間、わたしが利用していた抗原検査の感度・特異度はどのくらいだと思いますか?

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