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文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】

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#WHO

「パンデミック条約」の現在地

WHO加盟国は4月29日、「パンデミック条約」の最終文言をめぐる話し合いを再開する。5月27日から始まるWHOの第77回年次総会での採択を目指してのことだ。 パンデミック条約とは、世界がパンデミック再発を抑止に努め、次にパンデミックが起きた際に収束に向けて平等にワクチンに配分できるよう協力するための枠組みだ。 条約はワクチン義務とは全くの無関係13日、東京では「ワクチンが任意である日本の主権を無視して、接種を強要するWHOに強く抗議する」「健康を人質にしたWHOの横暴を許

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WHOの新型コロナワクチン「新ロードマップ」と日本の方針の温度差

WHOは3月20日から23日に開かれたWHOワクチン諮問委員会(SAGE)での議論に基づき、新型コロナワクチンの追加接種に関するロードマップを更新することを発表しました。 この更新は、ワクチン接種と感染により世界人口のほとんどが免疫をもつようになったことと、および、オミクロン株が中心的な流行株となったことを考慮して改定されたものであるとのことです。 日本の「少しでも効果があることは何でも続ける」姿勢にも一石ロードマップはもともと、リスクの高い人たちを守ることを通じて医療を

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2019年10月、在武漢アメリカ領事館は武漢の異変をキャッチしていた

新型コロナの「第1号患者」の公式発生日は2019年12月1日だ。 2020年1月24日、中国の研究グループが専門誌の最高権威「ランセット」に発表した論文によれば、新型コロナによる最初の患者が確認にされたのは2019年12月8日で、その患者が症状を示したのは12月1日である。国際保健の最高権威であり、医療保健関連の国際統計のオーソライズ機関であるWHO(世界保健機関)も中国政府から同じ報告を受けている。 だから「第1号患者」の公式発生日は12月1日だ。 しかし、同論文と中

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武漢にある、もう1つの研究所への疑惑

世界が「バイデン報告書」の発表を待っていた8月25日、WHOウイルスの起源の調査チームの専門家は連名で、科学誌「ネイチャー」に「新型コロナウイルスの起源:カギとなる調査のための窓は閉じかけている」と題したコメンタリーを発表した。今年1月に実施され、3月末に発表された調査報告書では、研究所漏洩説は「極めて可能性は低い(least likely)」と評価した理由を釈明しながら、初期の患者群の検体や疫学データの再解析など自然変異説を前提とした更なる調査の実施を強調した。 新型コロ

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中国とWHO、蜜月の終わりに―「バイデン報告書」発表までの3か月

米国現地時間の8月24日で、米バイデン大統領が米諜報機関にウイルスの起源について独自調査を行い、90日以内に報告書をまとめるようと命じたとの声明を発表してからちょうど90日になる。 世界保健機関(WHO)が武漢ウイルス研究所(WIV)からのウイルス漏洩説を強く否定する報告書を発表した今年3月、大統領に就任したばかりのバイデン氏は米諜報機関にウイルスの起源の独自調査を依頼した。しかし、受け取った報告は結論に達しておらず、中国に問うべき「具体的疑問点」を含めて90日以内にもう一

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新型コロナウイルスの起源、中国情報開示のカギ握る「ふたりの人物」

6月3日、米SNS大手Facebookは、陰謀論だとして削除するとしていた「新型コロナは人工的に作られたウイルス」と主張する投稿の削除をやめる方針を示しました。アメリカは一般メディアだけでなくソーシャルメディアも巻き込んだ総力戦で「研究所漏洩説」の可能性を世界にアピールしていますが、専門誌はニュース欄も含め冷静です。サイエンスは政治の道具になるのか。メディアはサイエンスと政治、どちらに振れるのか――。 ●中国に埋もれた情報を公開できるのはこの2人 新型コロナウイルスの起源を

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「中国人研究者は生物兵器の話をしていた」報道と研究所漏出説筆者インタビュー【資料編】

ニコラス・ウェイド氏の「新型コロナ武漢ウイルス研究所漏出説」記の方、いかがでしたでしょうか。 その解説の方も、いかがでしたでしょう。 今回の記事では、ウェイド氏の人となりやこの問題に対する向き合い方が覗える、武漢ウイルス研究所漏洩説についてインドのテレビのインタビューに答える映像があったので要点を翻訳します。 また、ウェイド記事が「原子力科学者会報」が転載されてから2日後の5月7日から10日頃にかけて複数の英字メディアで公開され、ウェイド記事の拡散を後押しすることになっ

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「新型コロナ武漢ウイルス研究所漏出説」は陰謀論か合理的な告発か?【解説編】

前回のnoteで翻訳を公開した、英国人科学ジャーナリスト、ジョン・ウェイド氏の長文記事「新型コロナウイルスの起源:武漢でパンドラの箱を開けたのはヒトなのか自然なのか?」。翻訳や原文を読まれた皆さんのご感想はいかがでしたでしょうか。 湧き上がっては消え、消えては湧き上がる、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所(WIV)への疑惑――。世界の科学者は遺伝子解析の結果などを根拠に研究所漏洩説を陰謀論として強く否定してきましたが、同記事はそれに対し真っ向からチャレンジする内容です。

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『原子力科学者会報』が掲載した「新型コロナ武漢ウイルス研究所漏出説」記事【抄訳編】

いま「原子力科学者会報(the Bulletin of the Atomic Scientists)」が掲載した、英国人ジャーナリストのニコラス・ウェイド氏の長文記事「新型コロナウイルスの起源:武漢でパンドラの箱を開けたのはヒトなのか自然なのか?(“The origin of COVID: Did people or nature open Pandora’s box at Wuhan?”)」が注目を集めています。 学術誌に科学者たちが発表したラボ漏洩説を否定する声明やレタ

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WHOによるウイルスの起原の調査報告書【解説編】

「WHOによるウイルスの起原の調査報告書」を理解するための決定版記事。フィリピンのマニラにあるWHO西太平洋事務局に勤務していた頃の個人的な経験も踏まえ、現時点での評価を総括する記事を書きました。WHOは今回、中国に対して面白い駆け引きに成功したと思います。新型コロナウイルスの具体的な起原はこれが功を奏し、時間がかかっても必ずや見つかることでしょう。 3月30日に発表された「WHOによるウイルスの起原の調査」は120頁と部厚で、巨大官僚組織のWHOらしく無駄な文章や表現も多

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WHOによるウイルスの起原の調査報告書【抄訳編】

全120頁、やっとまとめました。報道には一面的な中国・WHO批判しかありませんが、報告書は科学的な内容で、中国が予想を上回る調査と解析を行っていたことがよく分かります。「政治的に捻じ曲げられたのではないか」と疑われる部分についても読めばすぐに分かる書き方になっています。WHO特有のまどろっこしい文章は省き、ハイライトのみまとめてあります。ぜひ読んでみてください。 【会見の内容についてはこちら(↓)の記事を】 https://note.com/rikomuranaka/n/n

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WHOによるウイルスの起原の調査報告書【会見編】

「分かったこと、分かっていたことはこんなにあった」 これが120頁におよぶ「WHOウイルスの起原の調査報告書」を読み終えた感想です。去る3月30日、1月14日から2月10日にかけて行われた、WHOによる新型コロナウイルスの起原の調査報告書が発表されました。発表の同時、日米を含む世界14カ国が「世界保健機関(WHO)新型コロナウイルス起源調査に関する共同声明」を発表して同報告書と中国を批判したこともあり、日本のメディアでは「中国が情報開示を拒否した」「WHOは実験施設からのリ

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WHOは科学的で政治的中立な機関なのか

2021年2月18日、米バイデン政権はWHOに対し、新たに2億ドルを拠出すると発表した。これをトランプ政権からの方向転換として歓迎する声もあったたが、中国政府は昨年5月、WHO総会の最終日に2年間で20億ドルを追加拠出すると表明している。筆者は「アメリカの拠出金は何と少額なのか」と、冷めた思いで報道を眺めていた。 「中国のあやつり人形」の批判

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WHO「ウイルスの起源の調査」武漢会見後のアメリカの動き

WHO専門家チーム代表のPeter Ben Embarekが武漢滞在の最終日、WSJ(米「ウオールストリートジャーナル」紙)に対し、「2009年10月以前から新型コロナの患者が発生していた可能性があった」コメントしたのをきかっけに英米メディアが他の専門家にも取材し、類似コメントを取った追加報道がたくさん出ている。一方、アメリカ政府は興味深い動きを見せている。

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