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【恋愛小説】「コットンパール」 Ep.1

 教室の窓から一日中見えていた景色は、今にも雨が降りそうな曇り空だった。梅雨明けはいつになるんだろう、とぼんやり考えながら、授業を終えた私は昇降口にいた。
「あ、晴人の気になってるって言ってた子じゃん。」
「やめろって、聞こえるよ。」

 下駄箱から靴を取り、履き替えているところに隣のクラスの男子2人組みが現れた。明らかにこちらを見て話している。
え?私…?
周りを見てみるがこの場に女子は私しかいない。明らかに私の事だろうと思ったが、気付かない振りをした。

 2人組の男子の1人は、女子の間でカッコいいと言われていて、学年でも目立つグループにいる男子だ。名前は、相馬翔矢(そうま しょうや)だ。
私は、目立つグループにいる人たちの事が少し苦手だ。というか、人間関係で振り回されたくないので、高校生活ではほとんどの人と距離を置いている。
もう一人の男子の名前は…、今、晴人(はると)って言ってたなぁ。隣のクラスは、私のクラスと体育が合同で行われるので顔は見た事はある気がする…けど、よくわからない。
とにかく、面倒に巻き込まれたくないので、その場をすぐに離れる事にした。

 曇り空の下を足早に駅まで歩き、電車に乗る。
席に着き、さっきの出来事について考えてみる事にした。
晴人って人が私の事を気になってる、というのは本当だろうか…。
体育の時間が同じだが、女子と男子は別れて授業をするし、それ以外を考えてもまるで接点がない。それか、相馬翔矢のいたずらの可能性がある。相馬翔矢は、彼が属するグループの中でも活発で、悪ふざけをするタイプの人間だ。この間も、相馬翔矢が授業中に新任の女教師をからかい泣かせてしまった、という話が女子の間で話題になっていたのを思い出した。
帰り際に、晴人っていう人をからかっている所にちょうど私がいた。だから、私が使われた、この線が濃厚だな。

とにかく、高校生活は目立たず、できるだけ穏やかに生活したい。
中学の時に味わったような経験はもう繰り返したくない。

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