お別れの日

6月のある日

子育てが終わり、定年を迎えた両親がセカンドライフを楽しむために、関東から四国に戻ることになった。この日、私は生まれてから就職し一人暮らしをするまでの23年間を過ごした実家に別れを告げることになった。

引越し日当日、お見送りのために実家を訪れると、
自分の部屋から見る景色が好きだったこと
夜中に目を覚ますと、寝室の天井の木目が人の顔に見えて怖くて眠れなかったこと
学校から帰ってきたら、カウンターで今日の出来事を親に話していたこと
リビングで妹とよく喧嘩したこと
小さい頃、悪いことをして「家から出て行きなさい!」と怒る母に玄関で抵抗したこと
クリスマスのプレゼントを家中探したこと
夜中にベランダで母と流れ星を見たこと
実家で過ごした時の日々の些細な思い出が蘇り、美化されていると分かっていながらも、思い出に後ろ髪を引かれるような思いだった。
両親がこの家を契約して購入してくれたから、ここで生活できていたと感謝の念を抱きながら、に感謝し後ろ髪を引かれるような思いでお別れをした。

そして、一人暮らしをし始めてからも2、3ヶ月に1回は帰省し顔を合わせていた両親とも、距離的に会える頻度が低くなると思うと寂しく感じた。 今までは、私が留学に行ったり、一人暮らしを始めたりと両親から見送られる立場だったのに、生まれて初めて、両親を見送る立場をになり、不思議な気分になった。

この日は、もう十分なほどお別れをしたと言うのに、退職される先輩にもお別れをする日だった。

彼女と過ごす日々の中では、
私を呼び掛ける声が優しくて大好きだったこと
失敗した時に優しく励ましてくれたこと
厳しく叱ってくれたこと
いつも面白い考えを聞かせてくれたこと
息子自慢を話してくれたとこ 一生懸命な姿、勇気ある発言に、何度も自分のなりたい姿を重ねたこと。
もう、そんなことが日常ではなくなって、滅多に会えなくなるのかと思うとすごく悲しかった。

一日に何回もお別れをされたことが無かった。
こんなに沢山お別れをしたのに、自分の居場所はこれまでと変わらないなんて、私が一人過去に取り残されたみたいだ。
呆然とした1日の終わりに、 日常をもっと大切に生きよう、大切に思っていることをこれまで以上に周りに伝えようと思った。

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