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支援する人を救う言葉②

「自殺するかどうかなんて誰にもわからないよ」

クライシスカウンセリング~自殺予防~の研修を受けたことがあります。
丸二日間の研修でしたが、公的機関でカウンセリング経験の長い講師の
先生の言葉に救われました。

「自殺するかどうか、結局は誰にも分らないよ。あっはっはっと笑って、またね、と別れた人が、帰らぬ人になるなんてことはよくある。後になって思えば、いやに明るかったなって。できることは、私はあなたに生きていてほしい。私はあなたに死んでほしくないと伝えること。」

 介護の仕事をしていると、「早く死にたい」「こんなんで生きていても仕方ない」という言葉を聞く場面は少なくありません。
 重症心身障碍者施設に勤務して間もなく、脳性麻痺の20代の女性が、自身が思いを寄せる男性看護師の結婚式の日に、ベッド上で「今日は○○さんの結婚式だね。私も結婚したい。でもできない。死にたい」と言われたことがありました。私もまだ、21歳でした。「そんなこと言わないで。幸せを祈るしかないよね。」という言葉しかかけられませんでした。
 
 クライシスカウンセリングを受講した今ならこう答えます。
「辛いね。悔しいよね。でも、私はあなたに生きていてほしい。私は明日もあなたに会いたい。一緒の時間を過ごしたい。私は何もできないけど泣いたり笑ったりは一緒にできる。」
 タイムスリップして、あの時の彼女に寄り添って、そう言いたいです。

一つ目のポイントは「I message」です。
「私はあなたに生きていてほしい」と伝えることです。

居宅のケアマネ時代もずいぶん「死にたい」と言われる場面がありました。
クライシスカウンセリング講座を受ける前でしたが、20代の頃よりは、進化していたので、I message らしきことは言えていました。
「もう会えなくなるのは淋しい」「私もあなたもいつか死ぬ。その時まで一緒に笑っていましょう。」などと、よく伝えていました。

二つ目のポイントは「質問」です。
「死にたい」と言われると、「そんなこと言わないで」と話題をそらしたくなります。でも、そこは、相手のSOSに反応しましょう。
「どんな時に死にたくなりますか?」
「死ぬ方法を考えたことはありますか?」
「実際に死のうとした経験はありますか?」
そこで、実際に自殺の準備をしていると告白されたら、一人で対応せずに、専門機関に支援の協力を依頼すべきです。
また、相手が返答できずに、口を閉ざした時も危険です。
自殺の可能性ありと判断し、一人にしないようにします。

クライシスカウンセリングについては、別の記事で詳しくお伝えします。

ここで言いたいのは、もしも、あなたが近しい人の自殺を経験しても、自分を責めないでほしいということです。

もしも、あなたの近しい人や介護している人に死にたいといわれたら、
「私はあなたに生きていてほしい」と伝えてください。

そして、救えなかったとしても、それは誰のせいでもない。

 介護支援専門員の更新研修の時に、こんな精神科の先生のお話がありました。とてもユーモアと優しさがあふれる先生でした。
「僕が精神科を選んだのは、救急外来がないからね。(笑)自分の患者がもしも自殺をはかって運ばれたとしても、それは救命救急センターで精神科ではない。」「医者だって全部の命を救えるわけじゃない。精神科医だって全部の自殺をとめられる訳じゃない。」
 
 ちょうど、ケアマネ10年目くらいで、どんな、事例も上手く支援できそうな、おごりや勢いのある時に、この、先生のお話を聞き、「救う」「助ける」「支援する」のではなく、「寄り添う」しかできなくても良いのかな。いや、「寄り添い続ける」でいいんじゃないかな。と肩の力を抜いたのを覚えています。

 読んでいただいた方の肩の力を、ちょっとでも緩められたら幸いです。

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