見出し画像

世界の素粒子研究所

(画像は日本科学未来館のバネル。以下に紹介する著名な研究所を示している。)

1.CERN(欧州原子核研究機構)

 世界最大の素粒子研究所。15年をかけて世界最大の加速器「LHC(大型ハドロン衝突型加速器)」を完成させた。スイスとフランスの国境をまたいで周長27kmに及ぶ。2012年にLHCを用いた実験で新たな素粒子「ヒッグス粒子」が発見された。ヒッグス粒子がなければ我々を構成する素粒子は光速で運動を始める。世界各国の研究者が集まる素粒子研究のディズニーランド。現在、FCCという新たな加速器を構想中。

2.KEK(高エネルギー加速器研究機構)

 茨城県つくば市にある日本最大の素粒子研究所。CP対称性の破れを証明するためにKEKBという電子・陽電子衝突加速器を開発した。改良したSuperKEKBは世界最高のルミノシティ(衝突型加速器の性能)を持つ。筑波研究学園都市の目玉といえば、個人的にはJAXA(!)ではなくKEKである。

3.J-PARC(大強度陽子加速器施設)

 茨城県東海村にある研究所で三台の大型陽子加速器が運転している。ここで行われるT2K実験はまさに見物。施設で作成したニュートリノを295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にある検出器に飛ばす。この検出器はスーパーカミオカンデ(※現在、ハイパーカミオカンデも建設中)と呼ばれ、ニュートリノ振動を世界で初めて観測した。

4.Fermilab(フェルミ国立加速器研究所)

 アメリカ、イリノイ州にある研究所。陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンを用いた実験では、1995年にトップクォークを発見している。今日、テバトロンは博物館に改装されている。現在もミューオンg-2実験などで標準理論に囚われない素粒子研究の最前線を行く。四年後に「DUNE at LBNF」というニュートリノ実験が始まる予定。ハイパーカミオカンデとの研究競争が始まるのかと思うと胸騒ぎがする。

5.BNL(ブルックヘブン国立研究所)

 アメリカ、ニューヨーク州にある研究所。RHICという重イオン加速器が有名。クォークグルーオンプラズマ(QGP)という宇宙誕生直後に発生した物質粒子のクォークとゲージ粒子のグルーオンによるプラズマ状態を実験で引き起こそうとしている。その昔、陽子シンクロトンのコスモトロンを用いた実験で宇宙線でしか観測されていなかった様々な中間子やΛ粒子,Σ粒子などの重粒子(バリオン)を作り出したことも有名。その他、1958年にウィリアム・ヒギンボーサム博士が「Tennis For Two」という世界初のビデオゲームを開発した。地元民への一般公開時には、ゲームの順番を待つ長蛇の列が出来たという。

あとがき

 今回紹介した加速器の他にも世界には沢山の加速器がある。今後も、日本での建設が期待されるILCや中国の構想するCEPIC、CERNのFCCなど様々な加速器が作られる予定だ。将来、日本が素粒子研究の応用技術で世界をリードする為に、政府はこの分野に積極的に研究費を充てるべきだと思う。一方で、身近な生活に素粒子研究の応用が利くようになるには、まだまだ長い年月が必要であろう。

日本科学未来館にある梶田博士からのメッセージ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?