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伊豆大島の自然と火山

 どうですか!この美しい風景。緑の大地に低い雲のかかる青空。手前には太平洋が広がっています。ここは東京都に属する伊豆大島です。この島は火山の噴火によりできた火山島で、近年も噴火を繰り返す三原山があります。今回、碩路の合宿として、伊豆大島を訪れ、三原山を中心に探索しました。三日間の調査により得た情報を基に、伊豆大島の自然と火山について紹介したいと思います。写真はすべて部員が現地で撮影したものです。ちなみに今回は部長ともう一名の部員、計二名による寂しい合宿(?)となりました…。今までは、「である」口調に拘り記事を書いてきた私ですが、今回はより親しみやすい「です、ます」口調で書いてみました。

伊豆大島の形成

 都心から110km離れた太平洋の地点。ここで今から数万年前に浅海底噴火が起こり、これが成層火山となり「伊豆大島火山」と呼ばれるようになります。その後、周囲に元々あった3つの火山島を取り込み巨大化しました。いわば島全体が火山であり、三原山はその一角に過ぎません。利島や三宅島、八丈島や青ヶ島などと共に伊豆諸島の1つに数えられます。行政は東京都庁の管轄の大島支庁が設けられ運営しています(さすが東京は広いですね!)。このような火山島は噴火を繰り返し成長するので、噴火が止まると波浪による浸食が進み、やがて島は岩礁となってしまいますが、伊豆大島はこれからも山頂噴火や側噴火により成長していくと考えられています。下の写真は地層大切断面と呼ばれる名所で、過去2万年に起きた大噴火による火山噴出物が何層も積み重なり形成されています。島を一周する道路を敷く為の工事中に発見されたそうです。
 ちなみに、合宿中は徒歩とバスで島内を回ったのですが、バスは本数が限られているため、あらかじめ計画を立てて利用することをお勧めします。この地層大切断面も傍にバス停があり、行きのアクセスは便利ですが、付近にはトイレや自販機はなく、道路と自然が広がっています。時間帯にもよりますが、数十分から最大2時間ほどそこに佇ずむことになるかも知れません。

地層大切断面

島の生き物

 火山島ならではの地形と生態系が見られることから、島全体が日本ジオパークとして認定されています。島の大部分は緑に覆われていて、島の特産である椿油を作る椿が多く育っています。現在はシャンプーなどの美容面で使われる印象が強い椿油ですが、島民の方曰く、昔は椿油で天ぷらを揚げることもあったそうです。その他にもセリの仲間の明日葉(アシタバ)が多く採れます。三原山のカルデラ近辺は1986年の噴火以降に進出した先駆植物たちが根を張り、このまま成長すれば森ができると考えられています。この近辺は多数のセミが生息しており、数歩行く度に顔にぶつかってくる位なので、相当数いるはずです。セミが低中木に多く集まるとは知りませんでした。セミが苦手な方は夏場を避けて訪れた方が良さそうです。現在、島民を困らせているのが外来種の、キョンとタイワンリスです。キョンはシカの一種で畑の農作物を荒らします。タイワンリスは椿の実を食べてしまい問題となっています。実際に、道端にキョンを捕獲するための罠やリスを駆除して回っている方を見かけしました。海では、過去の噴火で流出した溶岩が魚たちの隠れ家となり、豊かな生態系を育んでいます。今回の調査では海は潜りませんでした。運が良いとウミガメに会えるそうです。多くの観光客は海を楽しみに島を訪れるそうですが、我々は知らずに訪れてしまい、三原山の人の気配のなさに首をかしげていたものでした。
 余談ですが、過去二作の映画において、ゴジラが三原山に登場していることから、ゴジラにまつわるお土産(カレーや麻婆豆腐)、観光名所も用意されています。

ゴジラ岩。三原山お鉢巡りコース途上でみられる。

三原山の噴火

 

三原山

 三原山が形成されたのは1777年から1792年にかけて起きた安永噴火の時で、130年から150年に一度の大噴火で形成されました。三原山は1986年に比較的大きな噴火を起こし、火口から山を囲むカルデラの北部や北外輪山斜面にも噴火は拡大しました。下の写真は三原山の頂上から見下ろす場所にある中央火口です(写真では霧がかかっています)。ここからでは分かりませんが、実際の火口はかなりの深さがあります。

三原山中央火口
山頂付近の様子。植物は少なく、玄武岩が広がる。

 この時、島民は避難を余儀なくされ一晩で島を出たそうです。島民全員が無事に避難できましたが、一ヶ月間の島外生活を強いられました。このように火山島での生活はいつ起こるか分からない火山噴火と隣合わせにあるものだということを、今回の学習では学びました。島という性質上、四方を海に囲まれている為、外部へ逃避する手段が限られ、外部からの救援も時間がかかるのではないかと考えます。噴火を鎮静するために海水を汲み上げ、消防車両で火口に注ぐなどの対策を行い、噴火はなんとか止まりました。現在の三原山の噴火警戒レベルは1ですが、依然として活火山であることは変わりありません。地震や津波、台風などの自然災害が多発する日本ですが、火山災害が発生する可能性も踏まえ防災を考える必要性を感じました。島内には火山に関する資料を集めた博物館があり、伊豆大島火山だけでなく、全国・世界の火山に関する展示も多くあります。

伊豆大島火山博物館

 火山の噴火は大きな被害をもたらす可能性がある一方、温泉などの恵みを私たちに与えてくれます。大島にも天然温泉があります。スケジュールの都合上、我々合宿隊は入れませんでしたが、溶岩が造り出す独特の地形に根ざした大自然を堪能し、合宿を無事に終えることができました。三原山の登山中は強風と霧に見舞われ、身の危険を感じました。現地に向かわれる際は、服装や飲み物など事前に準備し、天候も考慮しながら注意して行くようにしてください。最後に早朝に船で島に着くときに撮れた写真です。今回は、伊豆大島の海の魅力は十分に知り得なかったので、ぜひ皆さんが島を訪れて明らかにしてください!

綺麗な朝焼け


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