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自分を語ることで「見える」こと|Chie Takazawa

みなさま、初めまして。
立教大学社会デザイン研究所「ライフストーリー研究」メンバーの高澤千絵です。私は大学院卒業後、首都圏を離れ、現在は地方で観光まちづくりの仕事をしています。メンバーの中で唯一の地方在住者でもあり、今後、地方で働く女性のライフトーリーなども研究してみたいと思っています。

さて、私は「大人の学び」がどのように意識や行動を変容させるのか、特に仕事に直結する学びではなく、社会や社会課題についての双方向的な学び(修論では社会対話型学習と定義)による変容を働く女性たちの語りやライフストーリーから紐解くことをテーマに研究してきました。今回は私自身の研究テーマとライフストーリーを少し絡めつつ、自己紹介をしたいと思います。

私が大学院の門をくぐったのは40代半ば。今でこそ「人生100年時代」という言葉も浸透し、新たな学びやチャレンジを始める人も増えてきましたが、当時の私にとって、仕事をしながら大学院に通うことは、これまで会社員人生の中で蓄積してきた経験や知識を特定の企業だけでなく、社会に活かせることはないかという、人生の後半を見据えた備えや新たな分野に対するポジティブな知的好奇心からでした。しかし先生方やクラスメートたちと話をするにつれ、自分の心の奥にある、自分自身の社会での存在価値を自問自答するような、モヤモヤした不安にも似たネガティブな感情から選択したのかもしれないと気づかされます。入学した頃はまだ無意識的にそのモヤモヤに蓋をしていたのかもしれません。

高校を卒業し、地方から上京し、大学進学、就職、転職、会社を辞めてアメリカ留学でマーケティングを学び帰国。その後、外資系化粧品会社や大手ファストフード会社のマーケティング職など、いくつかの会社を渡り歩きながら、ビジネスキャリアを積んできました。そこに至るまでいくつもの岐路や選択がありました。多くの素晴らしい人と出会い、教わり、学び、ワクワクするような多くの仕事にも携わり、一定の成果も出してきました。一方で、キャリアアップを望んだ転職活動では採用に至らなかったり、担当ブランドの撤退や希望しない配置換えを経験したり、涙した夜もたくさんありました。「女性が活躍する社会」と言われても、自分自身、ちっとも活躍している気がしていませんでしたし、「お金を稼ぐ=活躍」のような風潮に疑問を抱いていました。また「この仕事は自分自身で選んだのだから他の誰にも責任はない」「こんな結果になったのは、自分に足りないところがあるからに違いない、それを補わなければこの状況から逃れられない」、そんな感情を心の奥に抱えながら、ひとり、その時々の最善の選択肢を選びながら日々を積み重ねていました。

そのような中で、クラスメートになった同世代の働く女性たちが、学ぼうと思ったきっかけは何だったのか、学んだ後に何か変化は起きたのか、興味がわいてきました。自分自身も当事者の一員でもある「働く女性」の学びをライフストーリーや語りから紐解くことで、自分自身が抱えるモヤモヤも解明できるのではないか、そして社会を学ぶ先にどんな未来があるのか考察してみたいと考えるようになったのが、ライフストーリー研究との出会いのきっかけでした。ライフストーリー研究の奥は深いのですが、少し見えてきたのは、「自分を語ることは自分の歩みを受け容れ、新たに踏み出すこと」だということ。グループインタビューを行ったときに「自己責任と思っていたことと同じような経験をした人がいることを知って、気持ちが楽になった」と語った女性がいました。選択した事実や経験は変わらないけど、そこに新しい意味づけができれば、人は前を向ける。ライフストーリー研究を通して、そんな人を増やしたいと思っています。

私の研究については、機会があればいつかお話ししたいと思います。
Life goes on…

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