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歴史ナビゲーター れきしクン/長谷川ヨシテルさん(平21経)

 ご本人そっくりのオリジナルTシャツを身に纏い、池袋キャンパスへ現れたのはれきしクン/長谷川ヨシテルさん(平21経)。中学生の頃からやっていた野球を極めるために立教大学へ入学した長谷川さんが、なぜ、現在は歴史系のタレントや作家として活躍されているのかお話を伺った。そこには、自分の好きなものに対して素直に真摯に向き合ったからこそ得た現在があった。

「憧れの地で野球を続けたい」猛勉強した大学受験。

「東京六大学野球に出場し、神宮でプレーしたい。」大学受験の際に、れきしクンにとって一番のモチベーションとなった夢だ。元々、中学生から続けていた野球をさらに極めたいという想いがあったれきしクン。どの大学を受験しようか迷っていた時、高校のOBで立教野球部に所属している先輩が野球を教えに来てくれた。1999年、立教春季リーグ優勝の年に神宮でプレーをしたというその先輩に大きな刺激を受け、立教へ行こうと決意。偏差値が40余りしかなかったところから猛勉強をし、体が鈍る不安から浪人出来ない状況で無事に経済学部に合格した。そして、ずっと夢だった野球部に入部した。しかし、「大学に受かって入部した時がピークだった」と当時を振り返る。

周りとの差に挫折を味わう日々。

 まさに夢にまで見た野球部での練習の日々はどうだったのか。入学前から始まる慣れない寮での共同生活は、チームを一つにするための数々の厳しいルールに苦労した。また、実力面では自身が井の中の蛙であったことを痛感し、精神面でもしっかりと安定している周囲のメンバーと自分とを比較してしまい、上手くいかないと感じる日々が続いた。「今振り返ると、自分の足りない所を無理に補おうとするのではなくて、自分に合った役割を伸ばしていけば良かったのかもしれませんが、渦中にいる時はなかなか気づけないんですよね」。大人数の部員で争うレギュラーポジションや実力のある後輩たちの中で野球を続けることに辛さを感じ、2年の終わりに野球部を辞めた。

ふとしたことから生まれた歴史への興味が、現在に。

 その後、野球部時代には出来なかった塾講師のアルバイトなどを行い、学部の勉強にも力を注いだ。また元々、人に何かを教えて相手が喜んでくれることが好きだったため、教職過程も受講した。「歴史について分かりやすく学べるコンテンツを提供する」という現在のお仕事との繋がりが感じられるが、意外にも当時はまだ歴史にあまり関心はなかったそう。そんな中、仕事にするほど歴史が好きになったきっかけは、大学時代に行ったフランス旅行。行きの飛行機の中で、日本のことを知らないのにミーハー心で海外に行っている自分にふと気づき、それが恥ずかしくなって帰国後に日本の歴史の勉強を始めたのだという。

 大学卒業後は、昔から好きだったお笑いをやりたいという思いから養成所へ入所。高校時代の友人とコンビを組み、養成所の勝ち上がり式ライブを歴代最速で勝ち上がるという偉業を成し遂げたのちに晴れて芸人デビューした。若さゆえの根拠のない自信をもとに芸人の道を選び、デビュー後は話題の新人芸人として仕事も得たが、その後、周りの芸人さんとの技量・熱量の差を目の当たりにして挫折。「野球部時代と同じことをしていますね」と笑いながら当時を振り返った。しかし、れきしクンはそこで終わらなかった。ある時、戦国時代に詳しい芸人ナンバー1を決める特番で優勝したことをきっかけに、歴史系の舞台や番組の台本を書く仕事が増えた。そのうち「ここが自分の居場所かもしれない」と感じるようになり、コンビを解散して「れきしクン」として自分の得意なこと・好きなことを生かす道へ方向転換をしたのだ。現在は、講演会やメディア出演、歴史系の番組や舞台の構成作家・時代考証、歴史関連のYouTubeチャンネルなど幅広く活躍されている。

好きが仕事になり、自分が商品になるということ

 元々は趣味でやっていた歴史の知識を生かせる仕事をすることは、大きな喜びであり、恵まれていると感じるそうだ。その一方で、好きなことを仕事にしているからこそミスをしてしまった時のダメージは大きい。そこで、自分へのケアとして大切にしているのが周りの人たちの存在だ。当時はいがみ合うこともあった野球部のメンバーは、今でも定期的に集まって昔話で笑いあう仲であり、家族の存在も大きな支えであるという。「いくら1人で仕事をしていても、人は1人では生きていけないですからね」と熱く語った。

研究者ではない、歴史を仕事にするロールモデルに。

 歴史関係の仕事といえば研究者のイメージが強い中、れきしクンは歴史の面白さを伝えるために活動している数少ない存在だ。「史学科卒ではないし、大学院も出ていないので古文書は読めません。でも、研究者の方々が書き下した古文書を、親しみやすいかたちで広く一般の人へ広めることが自分の役割だと思っています。」自身が歴史を仕事にする新しいロールモデルとなることで、歴史業界を広げる手助けをしたいと話す。

「歴史は過去が積み重なって成り立っているので、突然消えて無くなったりしないですよね。自分は、そんな歴史という『変わらないもの』にすごく助けられたんです。」好きなことを仕事に活躍を続けるれきしクン。これからも、親しみやすい形で歴史に触れられる機会を多く作り出したいと締めくくってくださった。

(学生ライター:筑波まりも)



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