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「笑顔が生み出すご縁の力。新しい卓球文化を目指して」日本ペイントマレッツ運営グループ 真野菜穂子さん(平22現文)

「縁」が繋いだ入学

今回お話を伺ったのは2010年度卒業生の真野菜穂子さんだ。まず、立教大学への入学を志した理由を訊ねると、真野さんが口にしたのは意外な名前だった。もともと父の影響で野球が好きだった真野さんは、強豪校・PL学園のファンだったそう。そして真野さんが小学校の時にエースを務めていたのは、立教OBであり、現在はアナウンサーとして活動されている上重聡さんだ。そんな上重さんの進学をきっかけに立教大学を知ったことで、漠然とした「いいな」という思いが胸をよぎったという。そして、もともと大阪出身で上京への思いが強かったこともあった真野さんは、最終的にオープンキャンパスの雰囲気を決め手に立教大学を選んだ。そんな折に偶然高校の指定校推薦のラインナップの中に、立教大学を見つけたという。
「うちの高校はあんまり指定校推薦を使う人が少なくて、ちょっと見ておくかって思ったら立教があって。大阪からだと受験費用だけでもかかっちゃうし、さらに浪人しちゃうと両親に迷惑をかけすぎかもって思ったんです。だからいいご縁だと思って立教に行こうと思いました」
なんとなく、の憧れが実際に身近になっていく感覚は人生における運命の数奇を感じさせる。真野さんも入学後に父が立教志望だったということを知り、ますます不思議な縁を感じたそうだ。
入学後、念願のマネージャーになるべく野球部に入部。高校の頃は祖母と母の反対もあり、断念せざるを得なかったという。「当時の私はまだ親の言うことを聞くいい子だったんです」と真野さんは苦笑ぎみに語った。「でも、結局高校でそれじゃだめだって気づいて、自分の意思を優先するようになりました」。
真野さんがマネージャーを務めていた際に、ちょうど野球部が100周年を迎えたという。
そのときちょうど4年生だった真野さんはマネージャーとしての活動に加え、100周年を記念した部誌の作成、そして就活と卒論の執筆を控えていたそうだ。それでも楽しかったとあっけらかんと語る真野さんの姿に、真野さんのバイタリティの高さを感じた。

卓球を通じて思い出を

現在は卓球のプロチーム「日本ペイントマレッツ」の運営グループにて活動されている真野さん。そこでの業務はチーム運営から広報、公式ユニフォームやポスターのデザイン、そして社会貢献活動と多岐に渡る。そこでの印象的なお話を伺ったところ、支援学校に卓球台を寄贈したときのエピソードをお聞きした。普段はあまり感情表現がない子でもラケットとボールの音に反応し、いつもと表情が違う、と先生が話していたのを聞いて、来て良かったと感じるそうだ。また、子供たちの楽しみが少なくなっているこのコロナ禍の中で、思い出の1ページになれたら嬉しいと真野さんは語った。
そして、この学校訪問を通じて大阪府とのご縁ができたことも大きな成果だそうだ。ここでも人脈や縁というワードが飛び出し、やはり真野さんの周りには素敵な縁がたくさんあり、真野さんご自身も縁を大切にされる方だと感じた。


チームユニフォームやポスターにも、真野さんのアイデアが反映されている

ライバルは「ディズニーランド」!?卓球をエンタメにするために

真野さんが活動のうえで感じるのは「卓球を観戦する」という文化がまだまだ発展途上であるということだ。卓球を娯楽としてプレーすることがあっても、なかなか観戦するという発想に至らないのが現状である。そのうえで卓球をプロ野球やサッカーなど他のスポーツ観戦と同じように「休日にどこへ行くか」という選択肢として挙げてもらうためには、ディズニーランドも競争相手になるという。そのために、「勝っても負けても楽しめる空間を作る」ことをモットーとし、選手とファンの距離を近づけることを意識している。負けた日も選手を勢いよくファンサービスへ送り出すこともあり、その結果、「日本ペイントマレッツ」の平均満足度は96%を誇る。
選手のことを外部にアピールするうえで、選手との信頼づくりが必要不可欠だが、その距離感を掴むのもなかなか難しかったと真野さんは語る。
「私は卓球をやらないから技術的なところは言わずに、それ以外のところでは結構踏み込んで話したり聞いたりしていますね」
試合後のコラム執筆のための取材や日々のやりとりが信頼につながり、現在のチームの関係性を「家族のよう」と形容する真野さん。
ファンと選手、そして選手と運営。どの関係性も重視し、ファンが何を求めているのか、ファンを喜ばせるためには何をすべきかを常に考えているという。コラムに関しても、スタッフならではの視点で書くことで、ファンへ楽しさを提供するとともに、裏側を知ってもらう意図もある。
「例えば映像を提供すると見たファンたちの憶測が含まれてしまい、本当のことが伝わらないと思う」
だからこそ、応援しているファンの人には本当のことを知ってほしいと、選手の不調の真相などのナーバスな事柄もあえて包み隠さず書くのが真野さんのスタイルだそうだ。
このファンに対する誠実さが、人気やリピート率の高さの要因だと筆者は感じた。
彼らが知りたいことを把握し、そしてファンだからこそ知ってほしいことを伝える実直さ。この信頼関係が、ファンに「応援したい!」と思わせることができる秘訣なのではないのだろうか。


失敗を恐れず経験を!大学生活を充実させるための目標づくり

最後に、立教生に伝えたいことを伺った。
「社会に出るとどうしても失敗を恐れてしまう。だから大学生の頃からたくさん失敗して学んで、もし失敗したら素直にごめんなさいって言えるのが一番かなって思っています。失敗も経験の一つで、それを言い訳せずに、何かあれば謝るっていうのは大学生のうちに練習していたほうが社会人になってからもスムーズかな」
「あとは何か目的があった方が良いと思います。資格とか勉強とか。漠然と学校に通うよりは目指すものがあった方が良いし、私自身、後になってこの資格を在学中にとっておけば良かったなと思ったこともあります」
真野さんとのインタビューを通じて感じたのは人と人の間にある「縁」のパワーだ。時には自分で関係性を作りに行き、時には偶然生まれた縁を別の機会に生かす。生まれた縁をそのままにすることなく、大切にすることで信頼を育み、そして次のステージへと繋げていく。良縁を大切にする人にはまた別の縁が巡ってくる。真野さんの笑顔から素敵な教訓を得られた時間だった。

(左から 学生カメラマン伊藤七帆/真野菜穂子さん/学生ライター柴理咲子)


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