まだ救えるさ
俺には昔から勇気がなかった。
保育園に通ってた頃に、おしっこが漏れそうなのにトイレに行くのが恥ずかしくて先生に言い出せなかった。
小学生の時に、人と違うことをたくさん考えてたのにそれを言えなくて周りに合わせてた。
中学生の時に、小学校からずっと好きだった女の子と話すことすらできずに誰にも打ち明けられなかった。
高校生の時に、思い切って学校をやめてバイトを始めたけど何も変わらなかった。
20歳になって、地元の山口から上京してお笑い芸人になるためにNSCに入ったけど、本当に俺は何もできなくて一年で地元に帰った。
そして今。
21歳になって夢も何もないままアルバイトを探している。
俺には勇気がなかった。勇気がなかったんだ。
勇気を出さないといけない時は大好きなチャットモンチーの「君がその気なら」を何度も聞いた。
勇気は出なかった。
無理して東京の街をただひたすら歩いた時もあった。
深夜3時、阿佐ヶ谷の暗い公園にある電話ボックスの前で幽霊を探した。
何者かでありたかった。
だけど勇気も出なかったし霊感もなかった。
何度も死のうと思う瞬間があった。
そこで死ぬ勇気もなかった。
俺はこの先どうなるんだろうか。
ずっと考えてる。
道は走れないほどにボロボロだ。
それでも俺は進まなければいけない。
勇気を持てずに、好きな子に想いを伝えることすらできなかったあの時の自分に。
人に合わせることでしか立場を保てなかった自分に。
まっすぐ夢を追いかけることすらできなかった自分に。
こいつらに意味を持たせることができるのは今の自分だから。
待ってろ過去の俺。
俺がお前を救ってやる。
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