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没頭と刺激を求めてCONTAX Ariaを購入しました。 〜写す瞬間、息を止める〜


出会い


ボディ:CONTAX Aria (1998年発売)
レンズ:Planar 50mm f/1.7 (1979年発売)

縁があって転売屋によって異常な高値で取引されているような粗悪な物ではなく、非常に良い状態の物を譲り受けました。


私の推しの方がCONTAX T2を使っているのですが、そこからずっとCONTAXとCarl Zeissが気になって気になって仕方がなくなっていたとき、このCONTAX Ariaと出会いました。

初めはこのAriaの2個前に出たRX(1994年発売)かそのもう1個前のST(1992年発売)を買おうと思っていたのですが、どちらも重さが800g近くあってレンズを付けると1kgを余裕で超えるというのがネックになっていました。
条件としては今使っているメッセンジャーバッグに財布と500mLペットボトルを入れた状態でカメラも入れて持ち歩けることだったのでAriaは最善策のように感じました。一眼レフを買おうとしてるのに重さを気にするなんて本末転倒な話ですが……

(本当は推しと同じCONTAX T2が欲しかったけど状態が良い物は10万は出さないと買えないから予算的に無理でした)


カメラは小さい頃から使っていてそれこそ昔はフィルムのインスタントカメラを使っていて、小学4年生の頃に父からCanon Powershot G7 (2006年発売)を譲り受けてからデジタルカメラを使っていました。

このPowershot G7は高校の修学旅行にも持って行くくらいずっと使っていて、当時となっては機能不足なカメラでしたが特に不便だと感じたことはありませんでした。
今となっては中古で数千円で買えちゃいますが、撮って出しでこんなに綺麗に撮れちゃうなら十分な気もしてしまいます。
当時のデジタルカメラとしては非常に完成度が高かったのではないでしょうか。

高校の修学旅行で撮った沖縄の海

でも何となく僕の意識としてデジタルなカメラを外に持ち歩いてまで撮る、という気持ちにはならなかったのです。

そしてそれはデジタル一眼レフでもなくミラーレス一眼レフでもないと。


何故この時代にフィルム一眼カメラ?


端的に言えば『王道から外れた何かをすることによる刺激』を求めたんだと思います。

調べればなんでもモニターから答えが返ってきてしまう。

体験したいものは全て動画サイトから得られる。

そんな時代だからこそ得られない何かを求めたのだと思います。


そしていざフィルム一眼レフカメラを持ったときに何故か懐かしさを感じてきて、「つまりはこの重さなんだな。」(©檸檬/梶井基次郎)と思ってしまいました。それくらい手に乗っかる重さとしてちょうど良くてしっくりきたのです。

そしてレンズを取り付けてファインダーを覗くのもこれまで感じたことの無い高揚感を覚えました。
元来このファインダーを覗くために今まで生きてきたのではないかと思うほどでした。


とまぁ脚色もこのくらいにしてこのフィルムカメラじゃないにしろ、初めて自分だけの一眼レフカメラを持つという感動は何にも代えがたいものだと思いました。


早速僕は近くの家電量販店に行き35mmフィルムを買いに行きましたが、どこにも売ってませんでした。
デジタルカメラしか取り扱ってないのだからそりゃそうだ。

その後カメラのキタムラに行き、無事『FIJIFILM SUPERIA PREMIUM 400(27枚撮り)』を購入してその日の内に全て撮り切って現像しようと思いました。

とにかく早く撮りたいというはやる気持ちと、こんなに古いカメラでちゃんと写るものなのだろうかという不安が入り混じっていたと思います。


そして人生で初めてフィルムをセットしました。

このCONTAX Ariaは自動でフィルムを巻いてくれるので、蓋を閉じると共にウィーンという懐かしさを感じる音がしてフィルムのカウンターが”01”となりました。

もうシャッターを切れば写真が撮れる。


僕は辺りを見渡して被写体を探しました。


やはり最初は花になるのでしょうか。

18時を過ぎて陽が傾いていたからか開放で撮ったのに少し暗い写真になってますが、そばを通る車のヘッドライトのボケ感がいい具合に出ています。
僕がこのカメラで撮った初めての写真になりました。


この日はもう暗くなってしまったので数枚撮ってまた後日昼間に撮りに行きました。

買ったフィルムはISO400のものなので暗くても写るのですが、なんせ田舎なので夜になるといよいよ撮るものが無くなってしまうのです。


THE  FIRST ROLL(作例)


それでは今回撮った写真をご覧ください。

人物が特定できそうなもの以外、失敗作も含めて全て載せます。

人生で初めてのフィルムカメラですので構図やカメラ技術などはお手柔らかにお願いいたします。

Camera: CONTAX Aria
Lens: Planar T* 50mm f/1.7
Film: FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400


さっきのと同じ夕方に撮った写真です。これが2枚目です。

このレンズは玉ボケが綺麗ということを耳にしていたので、後ろのボケが綺麗になりそうな構図で撮ってみました。
それにしてもこれはなんという花なんでしょうか…ちゃんと見てから撮れば良かったです。


家に帰るとベッドの上のぬいぐるみ達が撮ってと言わんばかりに興味を示していた(ような気がした)ので、みんな集めて写真を撮ってあげました。
部屋の照明が暖色光なので赤みの強い写真になりました。

50mmレンズだとみんなまとめて撮るのは難しいなと思って、ここにきて早くも35mmとかの少し広角めなレンズが欲しいなと思ってしまいました。
これがレンズ沼か……


なんかこれぞフィルムって感じがしますね。
デジタルと違う何かってどこから匂ってくるのでしょうか。

もうすこし構図とか絞りを変えた方がもっと良い写真になってたかもしれません。
右のマンションやファミマの色とかが少しノイズでうるさい感じがします。
あくまでも僕視点のイメージですが。これはこれで良いのか…?


フィルムの色の特徴を知りたかったのと、フレアをあえて出すように撮るとフィルムらしさが出るのではと思い撮った空の写真です。

1枚目は凡作も凡作ですが、2枚目はどこからかフィルムっぽさを感じます。
やはり光の写り方だったり色の出方でしょうか。
現代のカメラだと露光補正だったりでより目で見たままのリアル感で写してくれると思いますが、僕が求めていたのはこういうフィルムらしい現代のカメラでは撮れなそうなものなので、この写真を見た時にしてやったぞ!と思いました。

しかし、よく見ると1枚目の右上と2枚目の真ん中辺りに同じようなゴミが写り込んでいます。
折角上手く撮れていてもこういう気遣いの足りなさで台無しになることを学びました。

今後はちゃんとブロアーを持ち歩こうと思います。


再び植物シリーズです。
こうして見ていくとやはりフィルムらしさの出る構図と、現代のカメラで撮る方が向いている構図があるように思えます。

僕は1・4枚目にフィルムらしさを感じましたが、2・3枚目は少し露光とか絞りに失敗してるからかあまり上手く撮れていないような気がしました。

う〜ん…難しい…もしかしたら簡単だと思っていた植物の撮影が一番奥が深いのかも…


近くで開発か何かで工事をたくさんしていたので撮りました。
最後の5枚目は完全に構図もピントも何もかも間違えていますね。手前じゃなくてせめて建築物にピントを合わせていたらまだマシだったかもしれません。

1枚目もなんだかパッとしないイマイチな構図です。このズドドドドみたいな機械が無ければ地面ギリギリから穴の空いた歩道を撮るのとかが良かったかも。

個人的に2枚目もフィルムらしさがあって好きです。本当は右に見切れてますが鳶の方が腰に巻く工具ベルト?があったので撮りたかったのですが、流石にプライベートなものかなと思ったのと恥ずかしさもあって撮れませんでした。


写真の鉄板“線路“を撮りました。(鉄板は電車でしょ…)

しかし、構図が悪い。特に1枚目。

2枚目もなんだかもっと被写界深度を浅くして後ろのボカした方が良かったかもしれません。折角フィルムらしさが匂うのに絞りが失敗してる気がします。


これはボケ感を調べるために開放で撮ったものです。
(よくよく見たら1枚目は開放じゃないかも…f/2.0~2.8くらいかな…?)

構図も何も気にせずに開放で撮っただけですが何だかいい感じがしますし惜しい感じもあります。
構図もそうですが物の見せ方を決める被写界深度ってすごく大事かもって感じた2枚です。


こういう写真が多くて実は僕は建築物が結構好きなのかもと気付きました。
テレビ東京さんの『新美の巨人たち』とか凄く好きで観てます。やっぱり好きじゃん。
(この前放送されていた東京カテドラル聖マリア大聖堂の回は本当に素晴らしかったですね。録画してあったからDVDにダビングすれば良かったと後悔してます。)

分かる方はどこの建物かすぐに気付くかもしれませんが、このデッキが出来た時僕はとにかく大興奮して出来た日に何往復もしましたし下からも上からも何度も見ました。
木目調のデッキが弧を描いている建造物に何とも言えない魅力があって惹かれてしまいます。

あとはこの2枚目のあまりにも無駄な作りの階段と踊り場。こういう建築に興奮してしまいます。
最初は無駄だろと思っていましたが地元の女子中高生はよくここに集まってTikTokをしていたり、YouTuberが撮影をしたりしてるのでこういう無駄と思える場所こそが今は求められていたりするのだなと思いました。

3枚目は言わずもがな格好良い無機物です。良いですね。惚れ惚れしますしフィルムらしさと50mmレンズの良さが出ている気がして個人的に好きです。


これらの写真は全て『山本写真機店』様に現像・データ化していただきました。

郵送現像できる場所をネットで色々調べてると大体1週間くらいと書いてあったのでのんびり待ってましたが、山本写真機店様に届いてから2日半でデータがメールで送られてきたので驚きました。

画像編集だったりレタッチの技術は皆無なので、撮って出しのデータでここまで素晴らしく仕上げてくださるのは本当に嬉しいです。

今度また別のフィルムで撮って送りたいと思います。


フィルムカメラへの感想


正直ノリと勢いで買ってしまってフィルム・現像代の高さとか考えてなくて後悔したりもしました。
ちなみにもしデジタルカメラを買うならSONY Cyber-Shot RX1RかSONY α7Cです。一度は触ってみたいです。高くて手が届きませんが……

それでも今はフィルムカメラの良さ、これじゃなきゃいけないという没頭を感じています。

CONTAX Ariaの取扱い説明書には撮影するときの方法にこう書いてあります。

【カメラの構え方】
①脇をしめてカメラを安定させる。
②写す瞬間、呼吸を止める。
③手にあまり力を入れず、静かにシャッターボタンを押す。


僕はこの『写す瞬間、呼吸を止める』にフィルムカメラの全てが詰まっているのではないかと今回感じました。
(他の普通のデジタルカメラにも同じ説明が書いてあったら恥ずかしい…)

ネガフィルムはミラーが倒れてシャッター幕が開いたその瞬間の光を浴びて、その時の全てを切り抜いて記録しています。

全ての事象が分かりきっているかのようなこの世界に対して、空間と時間をミクロな視点で切り抜いているフィルムカメラは、撮影者に3次元ではない新たな視点を与えてくれている気がします。
これがデジタルカメラには無いフィルムカメラが持つ雰囲気なのかなと思いました。

ファインダーを覗いて切り取れる世界のチャンスは一度きり、二度は絶対ない。

そして息を止めて空間と時間を止め、シャッター幕が開く。

ふかぶかと胸一杯に匂やかな空気を吸い込めば、ついぞ胸一杯に呼吸したことのなかった私の身体や顔には温い血のほとぼりが昇って来てなんだか身内に元気が目覚めて来たのだった。……
 実際あんな単純な冷覚や触覚や嗅覚や視覚が、ずっと昔からこればかり探していたのだと言いたくなったほど私にしっくりしたなんて私は不思議に思える
(梶井基次郎『檸檬』より引用)


僕にとっての檸檬はフィルム一眼レフだったのかもしれません。

次の休みの日が来るのが楽しみで仕方ありません。


なんの変化も起こらない退屈なこの世界の空間と時間を切り取って、それをそっとフィルムの中に閉じ込めて現像のときを待つ。

現像が終わって手にしたときその切り抜いた世界が爆発したらどんなに面白いだろう。


誰にも気付かれることのない興奮をマスクの下に隠された口角の上がった不気味な口に押し込んで休日を謳歌したい。

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