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漆原友紀作品概観 -バイオ・ルミネッセンスから蟲師最新作『地翔る影』まで-

 (なんとなく有料設定しましたが全部無料で読めます)
 こんにちは、筆者です。蟲師新作おめでとうございます。
 本日はこれの続きというか、蟲師資料についてまとめたら漆原先生の作品についてもまとめたくなったのでまとめます。
 前回ほどキャッチーな話かというとそうでもなく、漆原先生の作品で現在も読めるものをひたすらピックアップしていきます。要はビブリオグラフィーですね。
 実は別で長濱監督についてまとめてもいるのですが、そちらもアップしたらよろしくお願いします。
(なおどちらも5000字あるので時間ある時によろしくどうぞ)

 一応筆者の自己紹介。

筆者(コムラサキリッカ)

蟲師続章から好きだったが最近再熱し、8ヶ月ぐらい蟲師の話をし続けている。
続章時に愛蔵版及び続章DVDを買わなかったせいで今資料収集に困っている。
続章DVD揃えようとして30万突っ込みかけた話を前回した。

 ではいきましょうか。なお紹介順は刊行年順ではないので悪しからずどうぞ。

蟲師

 いつもの。とりあえず初手。言わずと知れた名作。
 言わずと知れた名作ですが、この前の記事も言った通り新品はほぼ手に入りません。2015年にとともに刷られた愛蔵版もです。まじです。筆者は2年ぐらいhontoとAmazonを観察して回っていますが、新品で手に入ったのは数冊です。
 割とやばいです。まあ電子書籍も揃っているのでそちらでも構わない方は電子書籍をどうぞ。

蟲師Official Book

 関連してですが、蟲師6巻時に出たこちらは漆原先生の長文インタビューが載っているのでおすすめです。割と貴重だと思います。中古しかありませんが、500円で入手できますし、蟲師ファンは買っても損はしないじゃないかなと思います。
 一応アマゾンのurlをどうぞ。
 蟲師 Official Book (KCデラックス アフタヌーン) アフタヌーン編集部

 では蟲師以外も紹介していきましょうか。

水域

 こちらはですね、2011年に出た上下巻の短編です。
 2011年だから蟲師後ですね。
 ダムで沈んだ村にまつわる短編で、現代劇でも背景の密度がやばい漆原先生が見れます。
 大まかなあらすじはアマゾンでも見ていただくとして、個人的に年下叔父×年上姪が最高……あとおじいちゃんおばあちゃんの馴れ初めとかめちゃくちゃいいよね。漆原先生、昭和〜平成もめちゃくちゃ風情あって最高っすね……
 2018年に新装版が出ていました。こちらはまだ在庫あるっぽいですね。僥倖僥倖。

水域 / 漆原友紀 - アフタヌーン公式サイト - モアイ

 「猫が西向きゃ」でも話しますが、漆原ネキは現代物も普通に面白いので読む価値があると思うんですが……猫もなあ……

フィラメント 漆原友紀短編集(バイオ・ルミネッセンス)

 猫の話をしたいんですがひとまず飛ばして短編集の話をします。

フィラメント 漆原友紀短編集
 こちらは2004年に講談社から出た短編集ですね。蟲師連載中におそらく人気が上がって出たんじゃないですかね。2004年といえばちょうどアニメ一期目の直前だし。
 でフィラメントの話をするとバイオ・ルミネッセンスの話をしなければならなくなります。

バイオ・ルミネッセンス
 フィラメントは実は1997年に出た「バイオ・ルミネッセンス」を底本としてます。蟲師連載以前にファンロードに投稿されていたのはご存知の方も多いのではないでしょうか。バイオ・ルミネッセンスはその時のファンロードの投稿作や名前は伏せられていますがある少女漫画雑誌に投稿された作品がまとめられています。
 で、バイオ・ルミネッセンスはファンロードの衰退とともに絶版になっています。

 そしてそのバイオ・ルミネッセンスの収録作を一部を除いて、まとめられたのがフィラメントです。
 まとめるとこう。
 バイオ・ルミネッセンス→(一部抜粋、一部追加)→フィラメント
 
 で収録されてる作品についてはこう。

※○がフィラメント新規、△がバイオ・ルミネッセンスのみ、◎がどっちも

○岬でバスを降りたひと
○迷宮猫
◎小景雑帳 第一景〜第四景
△草雲雀
◎化石の家
◎雪の冠
◎Mar•man
◎虫師<青い音楽>、<屋根の上の宴>

 『草雲雀』以外は全部フィラメントに収録されています。つまりフィラメント買っときゃまあ揃いますね。
 フィラメントは相変わらず紙媒体は在庫がありませんが、電子書籍がありますので気になる方はどうぞ。

フィラメント~漆原友紀作品集~ (アフタヌーンコミックス) 漆原友紀

 ……が、しかし話はもうちょっと続くんじゃ。
 フィラメントに収録されていない『草雲雀』は個人的に重要作品で、白髪の少年と白髪の蚕の神が出てきます。
 ──白髪の少年????? 実はヘッダーの画像はその『草雲雀』からの出典です。

 『草雲雀』を読むとわかるんですが、この時点で蚕の繭に心惹かれ共同体でやっかまれる白髪の少年と彼を連れ去ろうとする白髪の女が出てきており、あーーーーー……ってなりますね。

 『眇の魚』と『虚繭取り』じゃん……こ、根幹……
 まあおそらく白髪自体が多分漆原先生の中で「居場所のないもの」のわかりやすい記号で、そういう意味もあってギンコができたんじゃないかと、個人的に類推してます。
 バイオ・ルミネッセンス(フィラメント)はこのレベルで現在の漆原先生の根幹になっただろう話が多いのでまじでファンは読んでおいて損はないと思います。化石の家さあー……mar-manとかさー

 『草雲雀』が収録されたバイオ・ルミネッセンスは現在駿河屋を適当に見て回っているとある時はあります。気になる方はよろしくどうぞ。

「B6コミックバイオ・ルミネッセンス / 志摩冬青(漆原友紀)」[駿河屋]
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/503067941
 今適当に見てても見つかったので入手難易度自体は高くないと思います。

猫が西向きゃ

 で、これを踏まえて最新作です。2019年ぐらいですね。全3巻でお求めやすいです。3巻で終わっちゃったんだけどね……。まあ蟲師もギンコの過去話を蟲師3巻でやりましたから、蟲師ぐらいバズってたら続く予定があったんじゃないかなあと思います。
 しかし何がやばいかというと、最新作なのに紙媒体がないです。まじです。2巻はまあまあありますが、1巻はまじでないです。最新作が???? 嘘でしょ???? 出版業界の冷え込みー
 蟲師最新作が来た時に一巻が1000円ぐらいに高騰してたのは割と面白かったです(面白いか?

 ……あのー水域でも話したんですけど漆原先生普通に現代劇も面白いんですよ。ただね、あのー前回の友人に1話見せたんですが「結局蟲師と根底の観念も同じなら、それは蟲師でいいじゃないの?」みたいな感想が寄せられました。それもなーわかるーでも一応最後に至る着地点が違うので……
 個人的には漆原先生が出産されて、子供の描写がさらに上手くなってるのとか、おそらく蟲師では無制限バッドエンドだったのがハピエンのみになっているとか。その辺り見ていくとめちゃくちゃ楽しいんですけど。
 設定的には物理法則が容易く揺らぐ世界(道がたまに五叉路になったりする、作中ではそのゆらぎをフローと呼ぶ)なので、それで遅刻してもフローの影響なのでフロー申告書を出せば遅刻じゃなくなるとか。主人公勢が役所から委託されたフロー調査会社なので役所レベルで対応が当たり前になってるとか。めちゃくちゃ面白いんだけど!

 『草雲雀』の話をしたのでネタバレありで個人的な面白ポイントも書きましょうか。正直草雲雀-蟲師-猫が西向きゃを通しての記事も書きたかったんだけどちょっといつになるか分からんので……かいつまんで。

漆原世界においての、白髪の少年と居場所の話

——ネタバレ——————————————————————————————-
 『草雲雀』の白髪の少年は最後に友人に問いかけます。「俺はここにいていいのか」と。
 「蟲師」のギンコは過去に黒髪でありましたが、事情があり白い髪になりました(眇の魚)。漆原世界で言うならばおそらく“居場所を無くした“。
 そもそもギンコと居場所の話は、彼がヨキであった時代から問われているのです。

ヨキ「いやだ、俺の故郷はここだ。一番長くいた土地だ」
ぬい「違う、ここは私とトコヤミたちの場所。お前のいていい場所じゃない」

 その後、白髪になり『草の茵』で山のヌシの卵を割ってしまい、あちら側に行きかけたところを理に導かれ留まりました。
 そしてあちらから帰ってきたギンコはスグロにこう語りかけられるのです。

スグロ「だが、忘れるな。この世にいていい場所など誰にもない。(中略)この世のすべてがお前のいるべき場所なんだ」

 これねーーーー別にぬいはヨキ(ギンコ)が憎くて最初の台詞を言ったわけじゃないんですけど、ほぼねーーーーー『眇の魚』のぬいの台詞に対してのカウンターを『草の茵』のスグロが言うのがねーーーーーハーーーーーー

 では猫の話をします。
 ぼかしますが、猫のヒロタもこの世のものではありませんでした。

ヒロタ「そうだ。留まる理由はもうない。ここに俺を待つ人はいない。(中略)
あそこにいた俺は、“なりすまし”だ」

 ……まじでここら辺ずっと同じ話してへん? いやヒロタは白髪ではないんだけどでも漫画だと大体白髪では?(オタク特有ガバガバ認識
 この後ヒロタもなんやかんやあって、こちらに戻ってくるんですが、その際に言われたセリフが「おかえりなさい」「ただいま」なのがさー
 ギンコとはまた違った味わいがさー人に迎え入れられるのがさーギンコは体質と受け継いだ哲学的に人と蟲の共存を図りながら旅をすることで落ち着いたけどヒロタは最初から人だったからさーでちまちゃんに必要だって言われてもう一人の自分が別に俺があっちでもいいよ?って言ったらさーあれそう?ってなっちゃう……
 ……いやまじでずっと白髪少年・青年の居場所の話してんだよな漆原ネキ……クッソおもろ……
————————————————————————————————————-

 以上、雑記感想。ネタバレ終わり。
 とか、そのレベルで見ていくと普通におもろいんだけどな……
 個人的な印象としては「打ち切り」というより人気がふるわなかったのは事実だが、大体蟲師3巻分の構成と同じだし、これがひとまずの着地点だったのかな、という印象ですね。適当言ってます。普通に人気あったらごめんね!
 とりあえず1話の試し読み貼っときますね。俺にはめちゃくちゃ見るところがあって面白いんだけど、その読み方で他人にも勧められるか分からん……とりあえず最新作としての地点ではあるから……ファンは読むといいです。

猫が西向きゃ - 漆原友紀 / #1 The tail does not always face the east. | コミックDAYS

蟲師最新作『地翔る影』

 さてここまで話して漆原先生の作品は特に紙媒体で集めるのが一苦労というのがよく分かったと思います。まあ手に入るだけマシなんだけど。
 で、蟲師最新作来ましたね。おめでとうございます。ありがとうアフタヌーン編集部。ありがとう漆原先生。
 10ページ。うち2ページは宣伝なので実質8ページ……

 えっこれどこに収録されんの?

 フィラメント2が出るの? えっでも短編溜まってる? えっ……これどこで…………
 ……いつ収録されるか分からないので紙媒体派は今のうち買った方がいいよ!
 そんなわけでホイ。

 アフタヌーン 2021年5月号 [2021年3月25日発売](アマゾン) 
(リンク先はKindle版なんだけど紙版が1ヶ月で既に高騰しててウケてしまった……ウケない……こわ)
 じゃあついでに最新作『地翔る影』の感想も載せますか。

——ネタバレ———————————————————————————
 化野先生視点くそビビりましたね。構成として化野先生版めちゃ短『筆の海』みたいな感じですかね。
 タイトル通り『日蝕む翳』の対比かなと思ったらまさかの日蝕むでギャグ一辺倒だった化野先生のくそシリアスきちゃって興奮した。曇ることが滅多にない子が曇るとなんでこんなに心が盛り上がるんでしょうね……
 冗談はともかくあの短さで蟲師のそれこそ緑の座からの流れである「見ているものを共有するのは難しい」と来て「けれども見えているものが全てではなく、それを一瞬だけでも共有できたならそれは得難いことである」みたいなさ……その話をずっとサブキャラ勤めてた化野先生から来ると思ってなくて最高だった。
 えーめちゃくちゃいいな……これからもギンコと末長く仲良くしててくれ化野先生……
 ていうか地翔る影って普通に作中出てきた蟲のことかと思ったら地をひたすら歩いていくしかない化野先生のことだったのがさー本当漆原先生そこのリンク上手いな……
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 という。まじでいつどこに収録なのかわかんないので今のうち読んだらいいと思います。
 まあアフタヌーンに関してはコミックDAYSのサブスクに含まれておるので、そう言う人も見といたらいいんじゃないでしょうか。
 ネットでの感想ボックスも見つけたので、漆原先生にメッセージ送りたい人も送るといいんじゃないでしょうか。筆者も8ヶ月ずっと蟲師と漆原先生と長濱監督の資料集めしてないで送らなきゃな……はい……

アフタヌーン 応援メッセージ(googleフォーム)

最後に

 そんな感じの漆原作品を総括してきましたが、全体的に電子書籍はだいたいありますが、紙媒体は入手がキッツイっすね。
 もしこの記事が漆原作品を読まれたり買われるのの一助になれば幸いです。
そして気が向いたら感想ボックスでもファンレターでも出しといてください。筆者もなんとか……なんとか……(書きたいことが多すぎて書けなくなってるやつ

 ああ、そうそうこれは最後になったのですが。
 蟲師の画集は現在5万のプレミアムがついてて入手困難になっており、復刊ドットコムで投票を受け付けています。
 筆者も画集欲しいので会員の方は投票していただければ幸いです。5万かー……5万なー最後にいつも金の話をしてしまう。
『蟲師 画集(漆原友紀)』 復刊ドットコム投票ページ

 そんなわけでここまで読まれた奇特な方がいたら漆原作品読んだり買ったりしといてください。
 あと一応なんとなく筆者にもお賽銭付けたのでここまでで有用な情報があったら賽銭しといてください。続きは特にないです。

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