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同性カップルがお金の面で損をするかもしれない23とひとつのこと。

同性パートナーシップ制度、ずいぶん増えてきましたね。50弱くらいの自治で導入されているんでしたっけ?
基本的には良いことだとは思うのですが、同性パートナーシップ制度は婚姻に比べると、あまりにも弱すぎると言わざるを得ません。

今回は、法律的な婚姻ができれば、どのようなことができるようになるのかを、整理してみました。これらは「結婚すれば可能になるお得なこと」であり、もっと言えば、「男女のカップルには認められているけど、同性パートナーシップ制度では利用できないこと」です。

いろいろあるのですが、ここでは、おもに、お金の面で違うところをピックアップします。なるべく簡潔に、わかりやすく書いているので、ちょっとおおざっぱで不正確な説明になっている箇所もありますことをご了承ください。大きな漏れや明らかな間違いなどありましたら、教えてくださいね。

■社会保険関係

まず社会保険。このカテゴリの制度は、おおむね事実婚でも男女であれば適用されます。

(1)健康保険の扶養

配偶者に生計を維持されているなど、一定の条件を満たすと、社会保険の扶養に入ることができます。扶養に入った人(被扶養者)は、公的医療保険の保険料を払わなくてよくなり、扶養者の健康保険を使えるようになります。自分で健康保険に加入していた場合と同様に、3割負担です。扶養者側も、扶養しているからといって余分の保険料はかかりません。この仕組みは事実婚でも男女であれば利用できます。同性パートナーだと利用できません。

(2)3号被保険者

会社員の方(年金保険の2号被保険者)の配偶者で、会社で働いていない人(専業主婦など)は、一定の条件を満たすと、3号被保険者になることができます。3号被保険者は、自分では年金保険料を負担しません。この仕組みは事実婚でも男女であれば利用できます。同性パートナーだと利用できません。

(3)加給年金

歳をとって老齢年金を受け取るようになった人が、65歳未満の配偶者の生計を維持している場合、受け取る年金額が上乗せされます。この仕組みは事実婚でも男女であれば利用できます。同性パートナーだと利用できません。

(4)遺族年金等

年金加入者(基本的にすべての人は年金加入者と思って差支えないです)が亡くなったとき、その人に生計を維持されていた人は、一定の条件を満たすと、年金保険の遺族給付、いわゆる遺族年金を受け取れます(遺族基礎年金・遺族厚生年金)。遺族年金の条件を満たさないときは、寡婦年金や死亡一時金という遺族給付があります。これらの仕組みは事実婚でも男女であれば利用できます。同性パートナーだと利用できません。

(5)労災の遺族給付

労働者が業務上の原因で亡くなったとき(労災事故)は、労災保険から遺族に遺族給付という補償があります。この仕組みは事実婚でも男女であれば利用できます。同性パートナーだと利用できません。

(6)離婚時の年金分割

離婚をしたとき、一方の年金加入記録を、もう一方と分割することができます。結婚中にパートや専業主婦だったために働いている期間や収入が少なかった人が、将来、もらえる年金額が少なくなるのを防ぐために、働いていたほうの厚生年金の記録をもう一方と分け合う(年金額は加入記録から計算されるため)という仕組みです。この仕組みは事実婚でも男女であれば利用できます。同性パートナーだと利用できません。

■税金関係

私たちは年間の収入のうち、利益になったぶん(所得)をもとに所得税・住民税を課税されています。これに対して、所得控除というものがあって、条件に当てはまると所得額から差し引くことができて、結果として所得税・住民税が節税できるという仕組みがいろいろあります。税金関係は社会保険とは違い、男女であっても法律婚が要件になることが多いです。もちろん同性パートナーだと利用できません。

(7)配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者がいて、その収入が一定以下の場合、扶養しているほうが所得控除を受けられ、所得税・住民税が節税できるという仕組みです。同性パートナーだと利用できません。

(8)社会保険料控除

配偶者など家族の社会保険料(健康保険・国民健康保険、年金保険など)を代わりに払ってあげた場合、払った額を、所得控除にできるという仕組みがあります。同性パートナーだと利用できません。

(9)生命保険料控除

生命保険に加入して保険料を支払った場合、支払った額に応じて所得控除を受けられるという仕組みです。保険金の受取人が配偶者などである場合に限り、この仕組みが利用できます。最近、同性パートナーでも受取人にできる保険商品がありますが、その場合でも生命保険料控除は利用できません。

(10)医療費控除

病院などで医療費がかかったり医薬品を購入したりした額に応じて、所得控除が受けられる仕組みです。配偶者など、家族が負担したぶんも含めて、世帯で合算することができますが、同性パートナーは含まれません。

(11)寡婦・寡夫控除

離婚か死別で配偶者を亡くしたあと、扶養する親族がいる場合は所得控除が受けられる仕組みです。同性パートナーだと利用できません。

■相続・贈与関係

同性婚をめぐる議論でかなり重要視されているのが相続に関する取扱いです。遺言によって同性パートナーに遺産を残すこと自体は可能なのですが……。

(12)配偶者の相続分・遺留分

人が亡くなったとき、その配偶者は必ず法定相続人になります。子がいるときは1/2、子がいなくて相手の親がいるときは2/3、子と相手の親がいなくて兄弟姉妹がいるときは3/4を相続分とします。遺言などで相続しないとされた場合でも、一定の割合で「遺留分」があるため、必ず遺産を相続することができます。同性パートナーは法定相続人にはならないため、財産を残したい場合は遺言などで指定する必要があります。

(13)相続税の2割加算

相続や遺贈で財産を受け取った人が、亡くなった人の配偶者や一親等以内の親族でない場合、相続税が2割加算されるという決まりがあります。そのため、同性パートナーなどは遺言の指定により財産を受け取ったとき、相続税が2割加算になるのですが、配偶者であればこの加算はされません。

(14)配偶者の相続税額軽減

配偶者は、法定相続分の額または1億6000万円のどちらか多いほうまでの財産については、相続しても相続税がかかりません。同性パートナーは受け取った財産額に応じて相続税が課される可能性があります。

(15)贈与税の配偶者控除

20年以上結婚している配偶者に対して、居住用不動産またはそれを買うための資金を贈与した場合、2000万円までは贈与税がかかりません。同性パートナーはこの控除が適用されないため、通常は110万円以上の贈与には贈与税が課されます。

(16)不動産を相続・遺贈した場合の登録免許税

不動産の所有権を変更(登記)した場合、登録免許税が課されます。配偶者などが不動産を相続した場合、不動産の評価額の0.4%が課されるのですが、法定相続人でない人が遺言によって不動産を遺贈された場合は、不動産の評価額の2%になっています。同性パートナーは遺贈でしか受け取れないので、税率が5倍になるということです。

(17)小規模宅地等の特例

亡くなった人が住んでいた家を、その配偶者が相続した場合、一定の条件を満たせば、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」という決まりにより、不動産の相続税評価額が大幅に引き下げられます。つまり、結果的に、課される相続税額が下がります。同性パートナーが遺贈で不動産を受け取ってもこの特例は使えません。

(18)配偶者居住権

人が亡くなったとき、その配偶者は、以前から住んでいたふたりの自宅については、物件を相続しなかったとしても住み続ける権利があります。同性パートナーにはこの権利がないため、遺族との関係によっては住む家を出なくてはいけないかもしれません。

(19)生命保険金の非課税枠

亡くなった人は生命保険に加入していて死亡保険金が支払われた場合、受け取った人が相続人であれば一定金額まで、その保険金には相続税が課税されません。同性パートナーが受け取った場合、この制度は適用されません。

■その他

(20)離婚時の財産分与・結婚費用分担義務・慰謝料

婚姻しているカップルは、離婚にあたっては婚姻中に協力して築いた財産を分配できることが決められています。婚姻期間中も、生活費(これを「結婚費用」と呼びます)は分担する義務があるとされています。また、関係が破綻した場合は慰謝料も考慮されますが、同性パートナーの場合、これらのことが当然に考慮されない可能性があります。

(21)生命保険の受取人・指定代理請求人

生命保険金の受取人は、原則として2親等以内の血族とされています。また、なんらかの事情で本人が保険金を請求できないとき(たとえば、医療保険の請求をしたいが、本人が重い症状で入院中で手続きができないなど)に、代わりに請求可能な指定代理請求人を決めることができますが、指定代理請求人になれるのは、配偶者か3親等以内の親族と決められているケースが多いです。※近年、保険会社によっては同性パートナーも受取人になれるようになりました。

(22)自動車保険の補償範囲

自動車保険は、契約者本人だけでなく、家族が運転した場合も、補償されるような契約をすることができます。この補償範囲に含めることができるのは配偶者か一定の条件の親族などに限られ、同性パートナーを含めることはできません。
※近年、保険会社によっては同性パートナーも補償範囲に含められるようになりました。

(23)ペアローン

住宅ローンを組むときに、夫婦それぞれがローン契約をするペアローンという方法があります。単独ローンより借入総額を増やせる、夫婦ともに住宅ローン控除を受けられるなどのメリットがありますが、法律上の配偶者同士でなければ利用できません。
※保険と同じく契約上のことなので、金融機関が認めれば可能かもしれません。今後対応する商品が出てくる可能性はありますし、個別のケースでは認められたこともあるのかもしれません。

さいごにもうひとつだけ。

ここまで、23個の違いを挙げてきました。さいごにもうひとつ。

みなさんご存じないかもしれませんが、婚姻ってなんと無料なんです。証明書の発行などは多少、費用がかかりますし、結婚式をするなら相応のお金はいりますが婚姻そのものに費用はかかりません。

同性パートナーシップ制度は、自治体によって違いますが、戸籍謄本・抄本や住民票の写しを手続上必要とすることが多いので数百円とはいえ費用がかかってしまいます。渋谷区など一部では公正証書を必要としているところもあり、この場合、行政書士の報酬などを考慮すると数万円かかってしまう場合もあります。

この記事は以上です。

保険とかローンとか、誰もが利用するものでもないので、「損をする」は言い過ぎかもしれません。が、法律上の婚姻ができるか・できないかで違いがあることは事実ですので、まとめてみました。また、同性パートナーシップ制度では利用できませんが、養子縁組などによって可能になる制度もあることを付記しておきます。なお、同性婚が必要とする主張は、ここに挙げたこと以外に、緊急時の扱われ方や親権の問題などがあります。

参考

同性婚とは
http://marriageforall.jp/about/

同性婚ができないのは「1000個の社会保障を失った状態」3つの事例から婚姻の法的効果を考える
http://fairs-fair.org/same-sex-marriage-event-20180502/

パートナーシップ制度で十分じゃないの? - 同性婚の実現が必要な本当の理由
https://note.com/palette_lgbtq/n/n9cfb6345d757

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