おれんち

ドラマ『俺の家の話』は、めちゃくちゃ良かった。あざといくらい有りがちなお家騒動を展開しつつ、結末は予想とは全く違った形で着地した。能とプロレスの組み合わせも素晴らしかった。介護の現場にズルい人がいなかったのも好感が持てた。みんな真面目に生きていた。不真面目そうに見えても、そこには当事者としての理由があったから、敵に回すことがなかった。全ての伏線を回収する見事なストーリーに唸った。能舞台の美しさを損なわず、しかもポップな現代能にも笑いが込められていて、少しも飽きなかった。

と、ベタ褒めしておいてアレだが、ここから先はわたしの家の話だ。

実家の宗派は浄土真宗だそうで、「位牌」というものを置かない。「過去帳」に全てのご先祖の戒名やら没年やら享年が記されていて、ページはひとつながりの蛇腹タイプ。大きめのスマホ(機種は詳しくないからわからない)くらいのサイズで、それを仏壇の上段、センター寄りの右側に置く。

住職が先週お勤めに来てくれた時、「過去帳をお預かりして、お父さんの戒名を記入してきましょう」と言って持ち帰ったそうだ。今日はその記入済みの過去帳を持ってきてくれた。お勤めが終わり、住職が帰った後、わたしと母は「どれどれ」と過去帳を開いてみた。

最初の見開きには、ファミリーツリーが書かれていた。それはわたしの4代前から始まっていた。おそらく、何度かの戦争を潜り抜けるうちに、それ以前のご先祖の記録は失われてしまったのだろう。「俺の家の話」では、二十八世とか言ってるくらいだから、4代しか記されていないわが家の歴史は浅い。

母と過去帳をめくりながら、会ったことのないご先祖たちが文字だけで並んでいるのは不思議な感じだなと思っていた。赤ちゃんや幼児期に亡くなったご先祖もいて、胸がキュッとなった。

そうして、一番最後に父の戒名が書かれているのを確認した。あ。これ、字が違ってる。わたしはすぐに気がついた。それはそれは堂々と記されてあったのだが、堂々と間違っていた。わたしが「この字が違う」と言うと、母が「あっ、本当だ」と驚いた。この場合どうなるんだろう。過去帳は和紙でできていて、墨書きしてある。修正は上から紙でも貼るのだろうか。それとも二重線で消したりするのだろうか。

わが家の歴史に、修正が入る。それがまあ、なんと言うか、わが家らしくもある。

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