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かぼちゃ

 子どもの頃、食卓に上るかぼちゃは、醤油とみりんで煮付けられていた。それ以外の調理法はないのだと思っていた。見るからにゴツゴツと硬そうな皮は、ちょっとやそっとじゃ切れるとは思えず、薪割りみたいにオノとかナタで切るんだろうと思っていた。ねっとりとした食感と甘いような苦いような味はピーマンよりも苦手で、口中の水分が持っていかれる焼き芋と同じくらい「好きじゃないけど出されたから食べる」ものだった。女性の好むものが『芋たこ南京』と聞いて、ありえん、と思った。

かぼちゃといえば、覚えている歌がある。
『パンプキンパイとシナモンティーにバラの形の角砂糖ふたつ〜♪』

 かぼちゃパイ?その実態が全然思いつかない。味はどうなの。甘いの?シナモンティーとはどんなものだろう?一度は食べてみたいと思っていたが、当時はネットもなければ、そういうものを食べたことがある人も知らず、謎のまま大人になった。

いまだにかぼちゃのパイは食べたことがないが、かぼちゃの調理方法はいくつか知っている。焼肉やバーベキューで付け合わせとして出される薄切りのかぼちゃは必ず焦がすので、焼くのは得策ではないと思う。天ぷらにしてうどんに乗せるとか、裏ごししてポタージュにするとか、その程度だが、子どもの頃に比べたら3倍の飛躍である。ムスメが小さかった頃、かぼちゃを蒸して、黄色いところだけをほぐし、少し牛乳を混ぜた離乳食を作っていた。それにレーズンを混ぜて団子にすれば、幼児のおやつである。

ハロウィンのかぼちゃが🎃ジャック・オ・ランタンと呼ばれていることや、くり抜くための専用の刃物がキットで売られていることを知ったのはつい最近のことだ。

ハロウィンといえば、子どもの頃に見た百科事典で「ハロウィン」を知った。説明には「子どものお祭り」みたいなことが書かれていて、水をはったたらいにりんごを浮かべ、手を使わずに口だけでゲットする遊びの写真があった。わたしはハロウィンというのはかぼちゃではなく、リンゴを口でくわえて取る遊びだと思っていた。だから「トリックオアトリート」と言いながら家々を回る話は、全く別のイベントだと思っていた。

街に出たら、そこらじゅうがオレンジの装飾にまみれていた。スーパーのお菓子棚にもハロウィンを意識したパッケージの商品が並ぶ。仮装で盛り上がる人たちもいるらしい。

ハロウィンてなんだ?騒ぐお祭りなの?手を使わずにリンゴを口で取る遊びの日なんじゃないの?と、ぼんやり考えている。



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