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すうがく

今日、わたしは数学の授業を受けた。数学、と言うよりも「数学の世界」と言ったほうがいい。数式の概念の話を聞いた。教えてくれたのは高校の数学の先生だ。

わたしは数学が苦手で、嫌いだ。高校を卒業して以来、数学には一切触れていない。単純な四則計算はするけれど、関数とか因数分解とか、今日の話題に出てくるまで全部忘れていた。それでも生きてこられた。

先生は「完全数」についての話を始めた。話の内容についていこうと、全集中する。

しかし、集中力がそんなに続くわけもなく、楽しそうに数式を解説する先生の後ろ頭を見ていたら、妄想がむくむくと湧いてきた。こういう、専門性の高い人が登場する物語はどうだ。そもそもこの先生は、一日中、数学のことばかり考えて、暇があっては数式を解いて、家での娯楽も数学で、床には数式で埋まった紙が散乱しているそうだ。登場人物としてはかなり面白い。ラブコメ、サスペンス、群像劇、ギャグ、ハートウォーミング…うーん。どのジャンルが面白いかなあ、と思ったところで、「ここまでの話、わかります?」と聞かれた。「あ、えーと」わたしの目が集中力を欠いていたことを見抜かれている。当然だ。先生なんだもの。

妄想の世界はまだダメだ。我慢だ。後でゆっくり考えよう。

一通り、数学の概念の話を聞いて、質問を二つした。

Q「てことはつまり、世の中は全部数字で表せるってことでしょうか」
A「そういうふうに考えるのは文系の人が多いです。数字で表せないものの方が多いです」

Q「数学には必ず答えがある、って言いますけど、先生の話だと解明されていない数式もあるようなので、それが解明されるまで実用化できないってことですよね?」

A「そうでもないです。たとえば、飛行機がなぜ飛ぶのかという話ですと、まだ解明されていない理論もあるんです。でも、実際には飛行機は飛んでいる。だから正解があるのだ、という感じです」

えっ。なんですって?そんなもんなんですか?えー。

そして、メモしながら聞いたのに、何が書いてあるのか、数時間しか経っていないのにもう思い出せない。

ただ、あれだけ嫌いだった数学のことを「ちょっと面白いかもな」と思い始めているのが不思議。これ何かに使えないかな、とわたしは考えている。


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