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こつつぼ

美容室に行った。年に1度か2度しか訪れない客を店主は快く迎えてくれる。ありがたいことだ。

その美容室には猫がいる。猫好きの店主は、迷い猫を預かったり、子猫を預かって里親を探したりしている。過去に飼った猫の数はどのくらいだろう。わたしが知っているだけでも、10頭以上はいる。店には常に2頭か3頭の猫がいて、好きな場所でくつろいでいる。

他のお客さんがどうだか知らないが、シャンプーをするとき、必ずわたしの膝に乗ってくる。仰向けになったところにスッと、重たくて温かい感触が乗ってくるのだ。「うげ」とか「おふ」とか変な声が出る。

今日もたっぷりと太った子がわたしの膝に乗ってきた。随分とたっぷり太ったものだ、と感心しながら撫でていると、ゴロゴロと喉を鳴らす。「ほうほう、そうですか」ゴロゴロ「ふうん、なによりですね」ゴロゴロ、とコミュニケーションを取っていたら、店主から「猫と話せるようになったら死が近いよ」と言われた。マジか。

帰り際、支払いをすると、店主は猫の形をした器の耳のところを持って、蓋をとった。目から上が外れるようになっている。中にはお金が入っていた。「これはなんですか」と聞いたら「コツツボ」と明るい声が帰ってきた。
「え?」と聞き返す。「猫用の骨壷なんよ。ペットの火葬をしてくれる場所があるけど、骨壷は人間と同じ感じのやつしかないんだよね。だから猫用の骨壷を作っている作家さんから買うの」「でもなんでお金が入ってるんですか」と聞けば「いや、骨を入れるためだけに買うのは切ないから、こうして普段使いをして親しんでおけば、いざという時に気持ちがざわつかずに済むんだよね」と答えてくれた。

「ほら、歴代の」と指差す方を見れば、大小の骨壷が並んでいて、「こっちは初期のね」と指差す方を見ると、観音開きの小箱があり、その中にもやっぱり猫の骨壷が入っていた。

かわいい骨壷。大事な猫たちをいつまでも愛でることができるから、寂しくないそうだ。なるほど。それはいいなあ。

人間も可愛い骨壷に入れたらどうだ、と一瞬思ったが、それはちょっと怖いからやっぱり無理だろうな。


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りかよん
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