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FARM

インクトーバー2022  31日目 お題は『農園』

ムスメが小さかった頃、畑を借りていたことがある。わずか4メートル四方くらいの小さな畑に堆肥や石灰を撒いて土を整え、畝を立てて野菜を植えた。あれもこれもと植えてみたかったけれど、色々と手入れも大変だし、畑が車で1時間くらいの離れた場所にあったので、植えっぱなしでもいいようなものを選んだ。週に一度、畑に行って土をいじる。トマトやナス、さつま芋などを少しずつ植えて世話をした。それはそれは楽しい時間だった。

東日本大震災の後、遠く離れたわたしたちにもなにかできることはないかと友だちが集まって、「お野菜宅配便」はどうかという話になった。九州産の野菜を東日本の小さな子どものいる家庭に送る。野菜の代金はもらうが、送料はカンパを集めて工面する。今ならクラウドファンディングというのだろうが、当時はまだ善意のお金を集めるのは「募金」「カンパ」と言っていた。

数ヶ月ほど経ったところでわたしたちは行き詰まった。お金は集まらない。野菜の希望者は増える。今度は野菜を自分たちで作ってはどうか、という話になった。それを売ったお金で送料を工面する。農地を貸してくれた人は無農薬栽培で畑と土を育てていた。気前よく貸してはくれたけど、農業の厳しさも教えてくれた。

それでもなんとかじゃがいもと玉ねぎを育てた。自分たちが作った玉ねぎは、本当にみずみずしく甘く、おいしかった。じゃがいもも、収穫体験を募ったら、何組もの家族が申し込んでくれて、少しのお金になった。そのお金をまた東北に向けた。

とはいえ、それもそう長くは続かず、いろいろなことがあって、わたしたちは解散した。お金がまわり、人が助かる方法をうまく考え出せなかったのだ。なんともいえない敗北感と、支援したいのに思うようにできないもどかしさに凹んだ。細く長く、と思っていたのに、あっという間に頓挫してしまったことを後悔した。

今は、子どもたちに医療支援をしている団体に、毎月わずかな送金をしているのだが、それにはあの時の罪滅ぼしのような気持ちも少し混じっている。

インクトーバーは今日が最終日。みなさんおつかれさまでした。



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りかよん
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