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しちゃく

ちょっと待ってよ、と思う。試着室の鏡は容赦ない。

来週末、スーツを着用するようにと言われているイベントがある。わたしはスーツを持っていない。そりゃもう、購入以外に選択肢はない。しかし問題は値段である。安けりゃいいとは思わないが、普段から着る必要のないものに何万円も奮発できない。

ポジティブな人から「何万円か出して買ったことをきっかけに、もっとスーツを着まわせるアイテムをワードローブに加えればいいのよ」とか言われそうだが、わたしはスーツを着ないで生きていきたいタイプの人間である。服に自分を合わせるのは苦手なのだ。だから、デザインがどうこうよりも、きちんと着られればそれでいい。似合ってるとかどうとか、他のアイテムと合わせてどうとか、あまり関係ないのだ。

「そうだ『しまむら』行こう」と、大雨の中、出かけたのだが、本日は定休日であった。残念。その他の安めのショップを覗いてみたが、カラフルな夏物がセールになっているところばかりで、教育セミナーの受付で着られそうな服はない。あとはもう青山のスーツしかないのか、と思い詰めたところにユニクロに出くわした。そうだった。奥の手があったじゃないか。わたしはジャケットが下がっているところへ行き、計5着に袖を通してみた。

試着室の鏡は本当に正直だ。どうしたらこんな体で街を歩いていられるのか、と恥ずかしくなるほどのおばさんがそこに立っていた。まるで昨日食べたピーナッツ最中じゃないか。コロコロでぱつんぱつん。確かにこの夏の間にどんどん体重が増加しているのは知っていた。しかし、体重が増えることは体型が変化していくことであるとの認識が甘かった。

基本形のわたしがいて、そのまま大きくなるイメージだったのだが、現実は太くなっていく場所が偏っている。わたしの二の腕はこんなに太かったのか、とか、この腹周りはどうにかしなければなりませんぞ、とか、鏡の前で一人、大反省会である。

買い物は疲れる。わたしはどうにかこうにかスーツではなく、ジャケットだけを購入し、ボトムスはまた考えることにした。1週間で痩せるなんてありえないが、このサイズのパンツやスカートは買いたくない。どうしてもの時は、家にある何かでどうにかしてやる。

と、意気込んで帰ってきて、ラーメンと菓子パンを一気食いしたわたしは一体、自分の意思はどこにあるのか。



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