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そこびえ

とにかく家の中の隅々まで、芯から冷えている。食器棚の陶器はもちろんだが、引き出しの中の箸まで冷たい。もう、こんな日は布団の中から出たくない。でも仕事には行かねばならぬ。

職場も寒い。換気のために、ドアが開けっぱなしになっていて、空気清浄機からは常に冷風が吹き出している。そもそも冬は苦手だが、今年は格別に冷える。

家に帰ったら、フリースのガウンを着る。これは、三ヶ月前に亡くなった、オットの母のものである。あったかい。「これいいね」とオットに言ったら、「当たり前だ。高いやつを買ったんだから」と言う。入院中の母に、せめてもの親孝行。でも、お母さんはあまり袖を通すことはなかったらしい。

家の掃除をした時に、オットの兄夫婦から贈られたものが、新品のままたくさんとってあった。オットとわたしが贈ったものも、大事に棚にしまってあった。生前、「使わないんですか」と聞いたら「もったいなくて」と言っていた。わかる。その気持ちはわかるし、ありがたい。でもお母さん、使ってナンボですよ。「まだ、これが使えるし」とボロボロになったエプロンとか、カーディガンとかを着ていた。

なんか切ない。でもこのガウンはあったかい。譲ってくれてありがとう、と思うことにしよう。

それにしても、今夜はほんとうに冷えている。


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