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ゆいごん

昨夜、オットがいきなり「俺が死んでも鈴鹿には行ってくれ」と言った。なんの話だ。死ぬんかい。え?いつ?今日?

「人間、いつ何があるのかわからんからな。明日、俺が目覚める保証はどこにもない」と言う。そりゃ、その可能性は誰にだってある。ゼロじゃない。「なんでそんなことを言うの」と問うと、「虫の知らせだ」と答えた。「なんの虫だーー!?」というわたしの声には答えなかった。

なぜそんなに悲観的になっているのかわからないのだが、「通帳と印鑑の場所はわかっているな?」と言い出した。そしておもむろに夕食を作り始め、ムスメとワタシに一手間かけたインスタント麺(焼きネギと春菊と半熟卵が入っていた)を食べさせた。「うまい」と褒めると「俺からの言葉として残しておこう。『料理は一手間』だ」と言った。

ムスメが「なに?何があったの?」と聞くので「お父さん、今夜がヤマだってよ」と答えたら「え?何?危篤?」と驚いていた。オットは「あとはよろしくな」と言っている。

0時を回ったのでそろそろ寝るか、と歯磨きをしていたらオットが「さらば」と言って居間から出ていった。朝が来て、オットが息をしていないってことはあるのだろうか。ウトウトしていたら、オットがトイレに行く物音がした。午前2時。こんな時間にどうしたんだろう。

少し時間が経ったが、出てくる気配がない。まさかトイレで最期を迎えたのか?と思って起きあがろうとしたら、ガタン、とドアが閉まる音がした。そうか。なんとかなるだろうと思ってそのままわたしは寝た。

朝、オットの寝室に行ってみたら、スマホを眺めながら横になっていた。「おはよう」と声をかけたら「何?」と返された。おい。

昼ごろスマホを見てみたら、家族のグループLINEに着信があった。
オット(おはよう のスタンプ)
ムスメ「おはよう 山は越えたか」
オット「こんばんが山や」
ムスメ「連峰だったか〜」
オット「縦走中」


とりあえず、本日も全員生存中である。



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