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どろぬま

夢の中でわたしは、友だちの車に乗っている。数人乗っているのだが、運転する友だち以外は、誰が乗っているのかよくわからない。

車が洞窟の入り口のようなところまで来た。「ここから北海道に渡るんだよ」と言うので、車でどうやって渡るんだろうか、と考える。

洞窟の入り口からは、割と急な坂になっていて、下りきったところが泥沼の始まりだった。ただ、その沼の中に、しっかりした土壌があり、そこはグリーンが美しい草むらだった。かなり広く、登り坂になっていて、上り切ったところは天にもつながっているように見えた。そして全体をよく見ると、それは北海道の形をしており、「北海道に行くんじゃなくて、北海道の形をした場所に行く、ということかしら」と友だちに聞いてみた。返事はない。

わたしは車を降りて、長靴を履いて沼に降りる。泥には足跡がついているが、ここは歩ける場所ではなさそうだ。ずぶずぶと沈んでしまい、身動きが取れなくなるのではないだろうか。わたしはおそるおそる足を踏み入れてみる。すると意外にも地面を感じ、歩けるのだ、と思う。ただ車が通るには道が細い。この細い道だと、うまく運転しなければ車は脱輪し、沼に沈むだろう。友だちは運転がうまいので、なんとか行けそうな気がする。

一枚の壁のようなものがあって、沼を仕切ってある。わたしはその仕切りの向こう側を見た。驚いたことに、有明海の干潟のような広大な沼地が広がっていて、膝まで浸かって何人かの人が、見慣れた段ボールの箱を2つずつ並べて乗せた板を引っ張っている。その段ボールにはもともと20ℓの水が入っていたもので、薄いブルーの箱にロゴが印刷してある。

その人たちの向かう先にはやはり光が射していて、明るい場所に向かっているのだが、どこか寂しくしんみりとした風景だった。

わたしは泥沼に足跡を残しながら友だちのいる場所へ戻る。すると友だちがやってきて「さあ、いきましょう」と言う。「どうやっていくの?車だと厳しいみたいよ?」とわたしが言うと、ニコニコしながら「うん!このあたりにこそっと止めて、歩いて行こうと思うの」と答えた。

ああそうか。それもそうだよな。こんな沼に車で踏み込んで、立ち往生しては意味がないな。どうしてわたしは車で行かなくちゃならないと思い込んでいたんだろう。

と、思ったところで目が覚めた。特に夢に意味があるとは思わないが、あの静かで異様に明るい、緑が鮮やかな草むら。そこに所々赤や黄色の花が咲いていた。淡々と沼地を進む荷物を持った人たち。あれは何だったんだろうかと考える。泥の質感やひんやりとした感じも、「ここに足を踏み入れたくないな」という感覚も、わりとリアルに思い出せる。


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