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くちぶえ

体がどんどん衰えておる。片足立ちができなくて愕然としたり、前屈で指先が床に着いてホッとしたり、ちょっとした変化に一喜一憂する今日この頃。細かい筋肉も硬くなっているようで、指先が曲がらないし、曲げると痛い。日頃、キーボードをバシバシ叩いているせいで指が痛いのかと思っていたのだが、単純に体が硬くて痛んでいたのだった。

一人暮らしをしていた頃、気分がいい時、鼻歌を歌ったり口笛を吹いたりしていた。気づけば、いつの間にかそれをしなくなっていた。今日、なんとなくそれを思い出して、口笛を吹こうとしたが吹けなかった。唇の周辺の筋肉が衰えているせいなのか、コツを忘れたのか、全く音が出ない。虚しくスースーと吐く息が漏れるだけだ。

老い。この二文字がのしかかる。ヒー。これまでできたいたことができなくなる。ムスメが幼稚園の頃、80代の料理教室の先生が「これ開けてくれるかな?」と豆の入ったビニル袋を差し出してきた。わたしはスナック菓子の袋を開けるように、上辺の真ん中を両手で引っ張って開けた。「どうぞ」と手渡すと、「いやよねえ、歳をとるとこんなこともできなくなるの。指先に力が入らないのよね」と先生は笑った。あの時、そんなもんなのかな、と思った。

「そんなもん」が自分にも押し寄せている。そんなもんを食い止めるにはどうしたらいいのか。皮膚は下がり、シミやシワがふえ、髪が白くなり、目が霞んでくる。耳が遠くなり、走ることができなくなって、立っていることも辛くなる。若い頃のようにはもう動けなくなっていく。もう明日は我が身、という例えが非常にリアルだ。

どこまで抗えるだろうか。筋トレ?ジョギング?ストレッチ?三日坊主のわたしにできるだろうか。いや、できることから始めよう。まずは口笛からだ。

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