見出し画像

顔半分

最近は、ほとんどの人がマスクをしているので、目の下まで隠れる。鼻と口が見えない。初対面の人がどんな顔をしているのか、わからないことも多い。入院している時、病棟の主治医がほんわかした雰囲気で、どちらかというと丸っこいイメージ(太ってはいない)だったので、マスクを取ったら「くまのプーさん」みたいな感じかな、と勝手に想像していた。前髪がちょっと長めで目のあたりはあまりよく見えてなかったし、なによりわたしは病気でゼーハーしていたので、よく見る余裕はなかった。

ある時、「おはようございます」と現れた主治医はなぜかマスクをしていなかった。鼻筋がシュッと通って目も切れ長で、歯並びが美しく、想像していたのと全く違う顔でびっくりしてしまい、「お…はようございます」と答えてしまった。一方で、外来の担当医は、最初から全体に細くシュッとした印象だった。先日外来で話しているうちにマスクが鼻の下までずり下がってしまい、先生がマスクを持ち上げるときに一瞬、口元まで見えた。想像していたイメージにかなり近かったが、鼻の下にヒゲが生えていて、ものすごく人間くさかった。

これからは顔半分で行きていく感じになっていくのだろうか。顔の認証システムが通用しなくて困るという話も聞いたが、目は口ほどにものを言うらしいので、意思の疎通は困らないのかもしれない。

でも「東京本社のあの人ね、一見かっこいいけど、マスク取ったらそうでもないよ?」とか給湯室で話題に上るのかな。「えー、なんでマスク取ってる顔見たことあるのよ」「えー、だって、なんか部長とお茶飲んでるとこ見たもん」「えー、部長と密じゃん」とか、くだらない話の展開が、頭の中でぐるぐる。

さ、晩ごはんでも作るとしますか。



サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。