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黙れない。

わたしは沈黙が苦手だ。みんながしゃべっているところで自分が黙っているのはいい。誰もしゃべっていない空間が苦手なのだ。慣れない相手と二人きりだったり、大勢の場で緊張していたりすると、特に沈黙が苦痛になる。

それで、ついどうでもいい話をしてしまう。黙っとけと思うが、口がもうなにか言っている。思考ではなく、反射神経みたいなものが、笑いを取らなくちゃ、盛り上げなくちゃという妙なスイッチを入れてしまう。

つい先日、みんながワイワイ話しているところで、急に熱が冷めたように沈黙が訪れた。急に不安になって、話の流れでムスメのことを話した。微笑ましいエピソードを話すと、みんなが「かわいいわねえ」と笑った。ああ気まずい沈黙が消えてよかった、と思った。

家に帰って「今日ね、あの話をした」とムスメに話したら、「どうしてそんなことを人に言うの?」と詰め寄られた。他愛もない話だし、別に困ることはないだろうと思ったが、それはわたしの思い違いだった。ムスメは怒り、「なんでだよう」とわたしを睨んだ。そこでオットが言う。「お母さんはな、その場が沈黙で苦しくなったら、家族を売るんだ。気をつけろ。人に言われたくない話はお母さんにはするなよ」

オットよ。ほんとうにそうだ。反省。そしてムスメよ。黙ってて欲しい話は、あらかじめそう言っておいておくれ。「言わないで」って言われたことは言わないから。その自信は、ある。

そういえば、PTAの委員決めのとき、その場の沈黙が苦手で「誰もやらないなら」と役員を引き受けてきた。オットは「黙っていれば、誰かがやるんじゃないの?」と言った。しかし、黙り比べをして引き受ける人が出てきたとしても、それは押し付けと同じだから、どうせ誰かがやらないといけないなら、自分から進んでやりますと言った方がいいんじゃないかと思っていた。

それを繰り返しているうちに「あの人は役員をやりたい人」と認識されたらしく、同じクラスになったお母さんから「あなたがいるから、うちのクラスは安心よ」とか言われるようになった。沈黙が苦手なだけなのに。

オヤジギャグを言う人は、行動を制御する前頭葉の機能が歳とともに衰えているから、言わずにはいられないのだと聞いたことがある。(科学的根拠については調べていません)もしかしたら、わたしはもうずっと前から前頭葉が衰えているのではないか。

そんなことを思いながら、これから毎日、どこまで黙れるかにチャレンジするつもりだ。お口チャックね。

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